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“福島に生きる”国と東電 山も除染を・・野菜農家 渡辺栄さん(59)

「山も除染しろ」と言う渡辺さん
「山も除染しろ」と言う渡辺さん

「国や東電は山も含めて本当に除染をする気はあるのか。山もやれ!」。福島県伊達市霊山町上小国でキュウリと春菊を栽培する渡辺栄さん(59)はこう怒ります。

東京電力福島第1原発事故で「福島産野菜が風評被害で安く買いたたかれている」ことに生産者としての誇りを傷つけられていると話します。

渡辺さんは、有機肥料で野菜作りをしてきました。2011年3月日以前は、阿武隈山系から採取する腐葉土が有機肥料の原料でした。山の恵みの腐葉土は、ミネラルたっぷりで、みずみずしく、やわらかく、甘みの深いキュウリを作り出しました。消費者からは「おいしい」と評判です。

■減収400万円超す

「3・11後に腐葉土の放射線量を簡易測定器で測ってみると5万ベクレルに達していました。「残念で悲しい」と、ショックでした。「土づくりの大本」を汚された怒りがこみ上げました。

渡辺さんが農業を継いだのは1971年でした。夏秋期にはキュウリを栽培。秋冬期は春菊を栽培しました。春菊は、10月から翌年の3月までが出荷期。野菜の周年出荷を可能にして野菜生産で生活できるようになりました。20年以上の努力で軌道に乗せた野菜農家の経営でした。それを台無しにした原発事故。

「2012年は被害が最悪で400万円以上の減収となりました」と渡辺さん。周辺の野菜生産農家仲間全体が放射能汚染に悩まされました。伊達市のキュウリの生産量は須賀川市に次いで福島県2位。約630戸の農家が6500トンを超える生産量を誇り、販売額は18億円以上になります。「産地丸ごと傷つけられた」

風評被害は続いています。渡辺さんはいいます。

「大手量販店の一部は福島産の野菜を使いませんでした。私たちはハウス栽培、露地栽培の作型ごとに検査をしていますから安全・安心の担保をしっかりと確保しています。賠償に頼った生産はやりがいも生きがいも奪います」

■原発ゼロは当然

有機栽培を守るために窒素肥料になる羊毛、骨粉、海水マグネシウム、北海道産のピートモス(ミズゴケなどの泥炭)などを買って野菜づくりを続けています。

JA伊達みらいのキュウリ生産部会の本部役員を務める渡辺さんは、風評被害を払拭(ふっしょく)するために全国を回って、「命がけで安全な野菜作りをしていることをアピールした」といいます。

「東京オリンピック実現で浮かれている場合ではない。福島の現実が忘れ去られたら復興置き去りです。いまだに除染は生活圏だけです。農道や山林は手付かず。絶対やらせる。原発ゼロは当然です。再稼働など論外です」
(菅野尚夫)

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