関西電力は12月22日午前、臨時取締役会を開き、大飯原発1、2号機(福井県おおい町)の廃炉を決めました。岩根茂樹社長はその後、福井県庁で西川一誠知事と会談し、2基の廃炉を報告しました。同社は来年、廃炉に向けた具体的な計画を国に申請します。
1、2号機の出力はいずれも117・5万キロワット。東京電力福島第1原発を除き、100万キロワット以上の大型原発が廃炉になるのは初めて。
岩根社長は会談後、記者団に対し、2基に国の審査に合格するための対策を施した場合、点検や保守の際に必要となる格納容器内の作業区域が一段と狭くなると指摘。このため、「安全で確実な作業と品質を保つことが難しい」と廃炉にする理由を語りました。対策の工事費は「算定していない」と語りましたが、巨額の工事費が経営の重荷になるため、廃炉を決断した側面もあるとみられます。
2基は2019年に運転開始から40年が経過する老朽原発。原発の稼働期間は原則40年で、原子力規制委員会が認めれば、1回に限り最長20年の延長ができます。
解説
関西電力大飯原発1,2号機(福井県県おおい町)の廃炉決定で、商業用原発の廃炉は福島第1原発を除いて11基となります。
大飯1、2号機は、アイスコンデンサー型と呼ばれる特殊なタイプで、日本では他にありません。
関電の他の原発と同じ加圧水型原発(PWR)の一種ですが、違いは格納容器内に氷を保持させる点。事故時の水蒸気による圧力上昇を氷で緩和させる設計です。このため、通常のPWRと比べて格納容器を小さくし、経済性を高めています。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は会見で、「格納容器が小さくなっている分、重大事故対策には大飯1、2号機は不利」と述べています。
新規制基準では、格納容器が小さい沸騰水型原発と同様に、圧力を逃すフィルターベントなどの設置が義務付けられており、適合性審査にも時聞かかかる見通しで、対策費や工事期間も膨らむとみられていました。
関電は、すでに新規制基準に合格している7基の原発の対策費に約8300億円を見込んでいます。関電の電力販売が落ち込むなか、巨費をかけて老朽原発を延命させても、メリットが少ないと判断したとみられます。
一方で関電は、高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の3基の老朽原発の運転延長を決め、再稼働へ向けた工事を進めています。事故のリスクがより大きい老朽原発の運転の是非を経営判断で決めるのは、安全よりももうけ優先の姿勢そのものです。(原発「取材班」)
(「しんぶん赤旗」2017年12月23日より転載)