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福島第1・汚染水対策「凍土壁」遮水効果評価できず・・“切り札”で導入したが

 東京電力福島第1原発の放射能汚染氷対策として1~4号機建屋周囲の地盤を凍らせる「凍土壁」(陸側遮氷壁、全長約1・5キロ)は、地中の温度が全域で0度以下になり「完成」しました。しかし、10月の台風で地下水量が増加し、東電は遮水効果の評価ができずにいます。汚染水対策の“切り札”として国と東電が導入した凍土壁の現状は―。(唐沢俊治)

 「評価をいつまでにとは、具体的に言えない」と繰り返す東電の広報担当者。10月に接近した台風による大雨の影響で地下水量が激増しました。

水量分からず

 東電は、凍土壁(山側)に遮られることなく建屋周辺の地盤に流れ込んだ地下水量が10月は1日当たり約1010トン、9月の同約630トンから急増したと推定しています。

 しかし、実際に流れている地下水量や、直接地中に染み込んだ雨量の評価は難しいと説明。「効果を評価するためには、大雨の影響がない時期がより正確になる」として、評価は年明け以降になると見込んでいます。

日150トン目指す

 同原発で増加し続ける汚染水。高濃度の放射能汚染水がたまっている建屋地下に流入した地下水が、新たな汚染水となっています。

 国と東電は、地下水の流れを遮断することによって汚染水の発生量を抑えるため、凍土壁を鳴り物入りで導入しました。設備を造るため国費約345億円を投入。昨年3月の運用開始以来、段階的に凍結範囲を拡大してきました。

 現在、1日当たり約200トンの汚染水発生量を、国と東電は2020年内に同150トン程度に抑制することを目指しています。さらに地下水流入を止めて建屋地下に滞留する汚染水の処理を完了させる必要があります。

「早く水処理を」

 いずれにせよ汚染水の抑制は、凍土壁のほか、構内に設置した井戸からの地下水のくみ上げ強化、雨が地中に染み込むのを防止するための敷地の舗装など一体的運用が求められています。

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は11月15日の会見で「とにかく早く建屋に滞留している水の処理を前へ進めたい」と述べました。

 

上・横だけでなく下から浸入

福島県廃炉安全監視協議会専門委員・福島大学教授(水文地質学) 柴崎直明さん

 凍土壁は、台風や大雨が降った時には効果が全くみえていません。今後、雨が少ない時期になったとしても、効果は限定的でしょう。

 凍土壁の内側の地下水は、「上」から雨が地下に染み込んだものや、「横」から凍土壁を通り抜けたものだけではないと思います。深さ約30メートルの凍土壁で囲まれた範囲の「下」の部分から、深いところにある地下水が浅い方に向かって入り込んでいる可能性があります。

 国と東電は当初、地下水を通しやすい層を遮水すれば、周囲から隔離され地下水位をコントロールできると単純に考えていたようです。しかし実際には、地層はきれいに連続しておらず、亀裂があったり泥質層が薄くなったりする部分があり、深部の圧力の高い地下水がそこを通って入り込んでいると考えられます。

 本当に遮水するなら、たとえば凍土壁の外側にさらに深く100メートルくらいの鉄板矢板などによる遮氷壁を造らなければならないでしょうが、かなり大掛かりな工事で予算や時間もかかってしまいます。

 凍土壁には多額の国費がかかったのですから、国と東電は、説明責任を果たしてもらいたい。廃炉作業が遅れないようにするため、得られたデータをすぐに公開し、検証することも必要です。

(「しんぶん赤旗」2017年11月26日より転載)