エネルギー基本計画の見直しを議論する審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」が8月9日に開かれます。市民団体などは、前回の策定に至る議論で民意が反映されにくい委員構成だったなどとして、可能な限り市民に参加の道を開き、民意を反映できる仕組みを求める要請書を経産省に提出しています。しかし、審議会のメンバーをみると、これまでの審議会で原発の新増設や建て替え(リプレース)、原発維持を主張する委員が並んでいます。
民意聞かぬ構成
審議会の委員は18人で、11人が前回に引き続いてのメンバーです。その一人、豊田正和・日本エネルギー経済研究所理事長は、前回の審議会で「新増設が可能なメッセージを明確に」などと発言するだけでなく、「原発輸出の視点を明確に」と、その体制整備を求めています。
野村総合研究所顧問で昨年、自公などの推薦で都知事選に立候補した増田寛也氏も前回に続いての委員。原発の新増設や建て替えの議論をすべきだと繰り返し主張し、計画策定後の原子力政策の具体化を議論する審議会でも「原発の新増設や建て替えのことをきちんと記載すべきだ」と述べています。
大学関係者では、「建て替えの問題をしっかり議論する必要がある」と主張する山口彰東京大学教授や、「議論すべきは、建て替え」と発言してきた橘川武郎・東京理科大学教授、「原発を基幹電源の一つと位置づける」ことが重要だという柏木孝夫・東京工業大学特命教授らが入っています。新委員には、原発メーカーのIHIの水本伸子常務執行役員らが入っています。
国民要求を批判
審議会の会長は、坂根正弘・小松製作所相談役。計画策定後に2030年度の電源構成で原発の比率を20~22%にするなどの報告書を取りまとめた審議会の委員長で、その際、再生可能エネルギーですべての需要を賄えることが見えないのに「原子力について完全否定するのは、国として全く愚かなことだ」と発言し、原発ゼロを求める国民を批判しました。
基本計画をめぐって、電力会社やメーカーなどでつくる日本原子力産業協会の今井敬会長は1月、基本計画に新増設の必要性を明記するよう求める発言をしているほか、経団連も「建て替えや新増設を政府施策に盛り込むべき」とする見解を発表しています。
エネルギー基本計画 エネルギー政策基本法で政府が策定を義務づけられた計画で、原発などエネルギー政策の基本的な方向性を示すものです。閣議決定され、少なくとも3年ごとに見直すことになっています。現行の計画は14年4月に閣議決定し、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて、原発推進路線を宣言。破たんの明らかな核燃料サイクルも推進。これを受け15年7月、30年度の電源構成を原子力20~22%、再エネ22~24%、石炭26%などと決めています。
(「しんぶん赤旗」2017年8月9日より転載)