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デブリ原子炉直下全域に・・廃炉の険しさ明らか/福島第1 3号機ロボット調査

3号機内部調査のイメージ

 カメラが見上げた先には、つらら状の塊。その下にあるはずの作業用の足場はなくなり、底には岩状の堆積物−−。東京電力福島第1原発3号機原子炉格納容器内部のロボット調査で、核燃料などが溶融して固まった「デブリ」とみられる物体が、初めて確認されました。国と東電が2021年にも始めるデブリ取り出し作業。ロボットが撮影した映像は、廃炉の道の険しさを裏付けるものでした。

(唐沢俊治)

 

 「燃料デブリの可能性が高い堆積物等を確認できたことで、これまでの想定から確信に一歩近づいたと考えている」。東電福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは7月27日の記者会見で語りました。3号機は数値解析で、溶けた核燃料の大半が圧力容器(原子炉)の底を抜けて格納容器に落下したと推定されていました。

岩状の堆積物

 3号機格納容器にたまっている放射能汚染水の水位が高いため、水中遊泳式のロボットで調査しました。

 制御棒を動かす装置には、圧力容器内部に貫通する穴から噴き出して垂れ下がったような付着物が見つかりました。装置は本来、等間隔で並んでいますが、ゆがんで不規則に見えます。

 底部には堆積物が重なり岩のような一つの塊になったものや、小石や砂のような形状のものも。水中ロボットのスクリューで、堆積物が舞い上がったり小石状の塊が動くのが確認できました。

 さらに、落下した足場の一部や、配管とみられる構造物が損傷、腐食していました。圧力容器を支える台座(内径約5メートル)の底部のほぼ全域で、デブリとみられる堆積物が確認できたといいます。

性状分からず

上から溶融物が落ちて重なったように見える塊。東電はデブリの可能性が高いといいます=7月21日

 そもそもデブリとは、冷却できずに高温になった核燃料が、周りの原子炉の構造物などと一緒に溶け落ちて固まったもの。ウランやジルコニウム、鉄などの金属のほか、コンクリートなどを含んでいるとみられます。

 映像で形や大きさはつかめたものの、硬さや、崩れやすさ、成分の構成比率など、性状は分かっていません。

 今回の調査対象は、台座の内側のみ。台座の外側にもデブリが広がっているとみられますが、ロボットは堆積物に阻まれ、底部の外側につながる出入り口に近づけませんでした。

 国際廃炉研究開発機構(IRID)などの推定によると、3号機のデブリは1〜3号で最も多い約360トン。このうち台座内側に約210トン、外側には約130トンが分布しているとみられます。

配管とみられる物体に穴が開いています。上の構造物の周りに岩のような物体が付着していますが、東電はデブリの可能性について分からないといいます=7月22日(いずれも国際廃炉研究開発機構提供の動画を編集局でつなぎ合わせ処理)

再稼働するな

 国は9月にも、1〜3の各号機ごとにデブリ取り出しの大まかな工法を決めます。18年度上半期に1〜3号機のいずれかで取り出し工法を確定し21年に取り出しを始める計画です。

 放射線を遮へいし放射性物質の飛散を防止するため格納容器を水で満たす「冠水工法」は、水漏れ防止が困難なことから見送りに。底部のみに水を張る「気中工法」を検討しています。

 廃炉作業をめぐり増田氏が「引き続き、関係者一丸となって慎重に取り組んでいかなければならない」と強調する一方で、国と東電は、柏崎刈羽原発(新潟県伯崎市、刈羽村)の再稼働に向けた動きを強めています。

 再稼働のために費用や労力などを割くのではなく、福島第1原発の廃炉作業に真摯に向き合い、全力を挙げるべきです。

 

1、2号機ではデブリ確認できず

 1号機内部調査(3月)では、格納容器底部に落ちたデブリが、圧力容器を支える台座の外側まで広がっているか、確認できませんでした。

 2号機内部調査(1〜2月)では、自走式ロボットが目標とした圧力容器直下まで達しませんでした。事前のカメラ調査で、作業用の足場の脱落を確認しました。


前例ない困難な取り出し・・元中央大学教授(核燃料化学)舘野淳さん

 ロボットの映像で、デブリ取り出しが大変な作業になることがはっきりしました。

 核燃料が圧力容器内にとどまった米スリーマイル島原発事故(1979年)と違って、底が抜けた最悪の状態です。圧力容器外の構造物と混ざったデブリの取り出しは、世界でも例がありません。

 デブリの組成をはっきりさせ、硬いものか柔らかいのかなど、取り出し前に、ある程度の見当をつけた上で、少しずつ削り取る作業を長い時間続けることになるでしょう。放射線による危険が伴う大変な作業です。

 どういう工法が最適か。次は、デブリのサンプル調査が必要です。今の政府のスケジュールでは、デブリの除去が終わるとは思えません。 

調査すすめば計画変更か・・元日本原子力研究開発機構上級研究主席 田辺文也さん

 デブリらしきものが映像で確認されたのは興味深いが、ペデスタル(圧力容器を支える台座)内の底に相当量があったことは想定の範囲内です。取り出しの方針に、何か目新しい情報が得られたわけではありません。

 ペデスタルの内側と外側にどういう割合で存在するかや、成分や構成などの情報が必要です。特に、高さ1メートルの堆積物は、表面が細かい破片のようでも、底は固まっている可能性があり、成分が均一とは思えません。核燃料や構造物が溶融した過程を詳細に検討する必要があります。

 政府や東電の現在の計画は「絵に描いた餅」。取り出し方針を決めても、調査が進むほど、大幅な変更を迫られるのではないでしょうか。

(「しんぶん赤旗」2017年8月5日より転載)