東芝は、6月28日の株主総会を前に緊迫しています。綱川智社長は有価証券報告書の提出期限を8月10日に延長することを発表。一方、東京証券取引所は、8月1日付で東芝の株式を東証1部から2部に移すことを決めました。
A 異常な事態が続いているね。粉飾決算が発覚した2015年3月期以降、東芝が延期した有価証券報告書は、四半期ペースを含め5度目となる。
B 東証は、東芝を1部から2部に移すことを正式に決めた。来年3月末までに債務超過を解消できなければ、上場を廃止する。粉飾決算に手を染め、巨額損失を発生させ、株主や投資家を欺いてきた東芝に、東証の監視が十分機能しているかどうかも問われている。
C 綱川社長が会見のたびに頭を下げる光景を何度見たことか。
官邸と経産主導
A 半導体子会社である東芝メモリの売却先として、官邸と経済産業省が主導してまとめた“日米韓連合”と優先的に交渉を進めることを東芝は正式に決めた。
B 具体的に言うと、日本の官民ファンドの産業革新機構や政府系の日本政策投資銀行、それにアメリカの投資ファンドのベインキャピタルなどが出資し、韓国の半導体メーカーのSKハイニックスは資金を貸し出す形で参加する構想だ。
C それって、粉飾決算の不正企業を政府が公的資金を使って救済するってことでしよ。おかしいよ。
A 財界も水面下で動いていた。経団連の榊原定征(さかきばら・さだゆき)会長は、5日の記者会見で、「春ごろに、いくつか代表的な企業トップと意見交換をした」と明かした。
B 榊原会長は、個別企業名を挙げることはなかった。でも「代表的な企業」ということになれば、三菱重工や日立製作所など、その企業は限られるよね。
A だが名乗りを上げなかった。財界ジャーナリストは、「経営判断として100億円単位の資金を出資することができなかった」という。
C 政府が乗り出しだのは、苦肉の救済策ということになるの?
「真実」が不問に
A 問題は、公的資金の投入で、だれを救済するのか、ということだ。この事態の発端は、米原発事業の巨額損失にある。当時の経営陣の責任は極めて重い。しかし、巨額買収の経緯などは未解明だ。救済劇の中で、経営者にとって「不都合な真実」が不問に付される可能性がある。
B 東芝がウェスチングハウス社を買収したさい、自民党政権の原発推進政策があった。東芝の一件で、原発が民間事業として成り立たないことは、ますます明白だ。ところが原発推進の安倍音三政権としては、そのことは絶対に認めたくない。
A この事態になっても東芝は、引き続き原発事業は進める。「東芝救済は、原発推進の安倍政権にとって、死活的課題」(財界ジャーナリスト)ということだ。
B 東芝メモリの早期売却を求めているのは、みずほ銀行や三井住友銀行などメガバンクだ。両社の貸付残高は、昨年12月末時点で約3500億円ある。メガバンクは、東芝が2年連続の債務超過に陥り上場廃止になることはなんとしても避けたい。
A 一方、犠牲になるのは、東芝で働く人たちだ。人員は減らされ、賃金は下がり、将来への見通しも持てない。取引先企業も減少している。
B そういう中、18日には東芝OBや地域住民らが集まった「東芝リストラ対策会議」が結成された。雇用と地域経済を守り、粉飾決算と原発事業の破たんの責任を職場や地域から迫っていこうというもの。画期的な取り組みだ。取材したメディアも8社にのぼった。株主総会でも宣伝活動を展開する予定だ。
C それはすごい。東芝が真に再生するための希望の光だよ。
(「しんぶん」赤旗2017年6月27日より転載)