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原発乱立、水上勉の警鐘今に・・劇団文化座公演「故郷」“嵐圭史さん45年ぶり共演佐々木愛さん”

左から嵐圭史さん、佐々木愛さん(後藤淳撮影)

 創立75周年を迎えた劇団文化座は、原発に対する憤りがにじみ出る舞台「故郷」を今月末から上演します。原作者の水上勉さんが、チェルノブイリ原発事故(1986年)の翌年から新聞小説として書いた作品を、98年に八木柊一郎さんが戯曲化。今回の舞台では、文化座代表の佐々木愛さんと客演の嵐圭史さんが45年ぶりに共演します。

 物語は1985年、ニューヨーク在住の芦田孝二・冨美子夫妻が5年ぶりに帰国する機内で、米国の若い女性・キャシーと知り合いになる場面から始まります。キャシーは、離婚後に行方不明になった日本人の母を実家のある若狭へ捜しに行く途中でした。夫妻も「安住の地」を探しに、妻の実家がある若狭へ向かおうとしていました。

 愛さんが演じるのは冨美子の母・トメ。若狭の旧家を一人で守っています。

 「原発を抱いた村に生きる人間を描いた物語です。若狭地方の話ですが、原発が列島のあちこちに立地する日本全体への水上先生の危惧が表現されていると思う」と話す愛さん。

 「日本、アメリカ、フィリピンと登場人物も多国籍で、『二つの故郷! 何という贅沢!』というせりふも出てきます。現代のトランプ大統領のような自国第一主義と反対に、国境線を超えるような思想も流れているんですね。この作品が好きな理由はその辺にあります」

 圭史さんはキャシーの祖父・清作を演じます。突然の孫娘の来訪で固く閉ざした心を開く老人の役です。

 「原発や農村の後継者不足、いずれも今の日本を先取りしたような問題提起を、声高でなく、日常のなにげないせりふの中に表しています。とくに、原発の灯と月の光が海面に映る。“美しい”光景と対比しながら、その底にどれだけのトロトロとした人間のおぞましいものが隠されているかを表現した部分は大好きで、大きな見どころになると思います」(圭史さん)

 2人が45年前に共演したのは、文化座公演の韓国の悲恋の物語「春香伝」でした。それ以来の共演に「旧友と再び仕事ができるような喜びがあります。日々稽古をしていると劇団を率いる愛さんの存在感を改めて感じます」と圭史さん。愛さんも「『春香伝』は思い出深い作品です。長い間、お互いにエールを送りあってきた存在です。演劇的同志として再び稽古を重ねられることに喜びを感じます」と語っています。

(「しんぶん」赤旗2017年6月27日より転載)