日本科学者会議福井支部が「共謀罪法」成立に抗議する緊急声明をだしました。
以下にその内容を記載いたします。
<緊急声明>
「共謀罪法」[組織的犯罪処罰法改正(テロ等準備罪法)]の強行採決に
抗議し、同法を廃止させよう!
少なくとも国民の過半数が「共謀罪法案」[組織的犯罪処罰法改正案(テロ等準備罪法案)]に賛同できないとし、同法案を支持する意見も国民の半分にも満たなかったにもかかわらず、民意を無視したままで、参議院本会議で強行採決により可決・成立した。
そのような状況のなかで、自民・公明の政府与党は、昨日(2017年6月14日)、参議院本会議審議の前に経るべき法務委員会での審議を打ち切り、本日(15日) 7時46分に本会議の「中間報告」で強行採決を行い、同法案を成立させた(賛成165票、反対70票)。 異例の徹夜国会では野党が法務委員長の問責決議案と内閣不信任決議案を出すなどして抵抗したが、安倍政権は、野党からの法案質義に対して正当な回答が全くできないまま、圧倒的多数の議席数を頼りに法案を強行可決した。これは安倍政権による国会私物化の暴挙である。同時に、今回の暴挙をずっと監視してきた私たち国民は、将来を担う青少年とともに、安倍首相とその夫人が関与したとされる森友学園問題や加計学園問題を不問に伏し隠蔽しようとする意図のあることも見抜いている。私たちは安倍首相のこの強引なやり方を決して許すことはない。
「共謀罪法」は277の犯罪対象を挙げているが、その多くは「著作権法」や「文化財保護法」など「テロ対策」とは言えないものである。私たちの日本科学者会議全国常任幹事会が去る4月4日に発出した声明で明らかにしたとおり、同法は、これまで3回廃案になった共謀罪法案と本質的には同一のものである。法案が出された段階から日弁連などの法律家団体や市民団体、マス・メディア、野党等によって厳しく批判され、廃案すべきとされてきた。
安倍首相は、今日(15日)の記者会見で、今後「国際組織犯罪防止条約」の締結に取り組むと述べたが、その条約は国境を超える組織犯罪を対象とし、マフィアや暴力団による国際犯罪を取り締まるためのものである。首相は詭弁を弄して2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に「テロ対策が大事だ」と言うが、条約締結のためには同法を設ける必要など全くない。すなわち、同法が成立しなくても、直ちに本条約を締結することは可能なのである。
法学者らによって指摘されているとおり、同法は、個人の尊厳を守り(憲法13条)、国家権力による刑罰権の乱用を防止する憲法・諸規定、すなわち、思想良心の自由、 信教の自由(19条、20条)、表現の自由(21条)、令状主義(35条)と基本的に相容れないものである。「共謀罪法」には、たとえば予備罪(35項目)、準備罪(6項目)、共謀罪 (13項目)、陰謀罪(8項目)があり、犯罪未遂に至らない段階で処罰可能としている。そうなると、国民の大多数が共謀罪法執行の捜査機関による監視の対象になり、民主的・自主的な活動を自粛するなどして社会活動の活力を失うであろう。また、私たち科学者が自由な学術活動を行うことも学問の発展も阻害される恐れが出てくる。
以上から、私たちは、憲法に抵触し国民の不安を増幅させる同法を廃止することを強く求めるものである。
2017年6月16日
日本科学者会議福井支部