陽子 関西電力の大飯原発3、4号機(福井県おおい町)まで原子力規制委員会の審査に“合格”したのね。
晴男 関電は、これで新規制基準施行後に設置変更許可を申請した3原発7基すべてが許可を得たことになるね。必要な手続きが済めば年内にも再稼働したい意向だ。
陽子 どれも福井県の若狭地方にあるのよね。すでに高浜原発4号機が稼働しているし、来月には3号機も動かす予定だから心配だわ。
複数事故考えず
晴男 高浜原発と大飯原発は、直線なら十数キロしかないからね。原発が集中立地する場合、事故が一度に複数の原発で起きた場合の考慮が必要だと思うけど、規制委の田中俊一委員長は「重大事故対策が、それぞれのところで閉じられるように対応している」と説明しているだけだね。
陽子 複数の原発が同時に事故を起こした場合を、考えていないということでしょ。東日本大震災の時も東京電力の福島第1原発だけでなく、福島第2原発もあわやという事態だったのに。
晴男 近くの原発で事故が起これば、敷地外部からの支援などにも大きくかかわる。
陽子 何より住民の避難が問題よ。若狭地方の幹線道路は東西に延びているから、原発と原発の間の地域は、いっそう避難が困難になるわ。
晴男 若狭地方には、関電の原発以外にも日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」など、廃炉中も含めると5原発15基がある。でも複数原発での同時発災時の避難計画は策定されていないそうだよ。
困難な避難計画
陽子 現実的な計画は無理じゃないかしら。
晴男 大飯原発の場合、30キロ圏が福井県のほか滋賀県や京都府にまたがっていて、もともと広域避難の困難さが指摘されている。でも、避難計画は規制委の審査の対象ですらないから、こういう問題は放置されている。
陽子 大飯原発は前規制委委員長代理の島崎邦彦さんが、原発で想定する地震の揺れの評価が過小だって批判していたけど、その指摘にも規制委は真摯(しんし)に対応していない。
晴男 住民の不安をよそに再稼働を進める政府や関電の姿勢は許せないね。
〔2017・5・27(土)〕
(「しんぶん」赤旗2017年5月27日より転載)