上場企業の致命的な失態です。四半期決算を再延期してきた東芝は、ついに監査法人からの「適正」との意見が得られず、監査意見のないまま報告書を関東財務局に提出しました。
損害賠償求める
2月14日および3月14日と、2度にわたって決算を延期してきたのは、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の内部統制問題の調査継続が理由でした。3月14日には、一部経営者が会計処理で不適切な圧力をかけたと認定され、16年4~12月期以前の決算についても追加調査が必要となっていました。
「株主など利害関係者の信頼を裏切り、多大な迷惑と心配を掛け、深くおわびする」
2015年9月30日の臨時株主総会で室町正志会長兼社長(当時)は、その年に発覚した粉飾決算についてこう謝罪していました。その後も、発覚した原子力事業での巨額損失で、幾度となく経営陣は会見で頭を下げ続けてきました。
すでに信託銀行11行は、東芝に計約140億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しています。今後、損害賠償の金額も膨れることが見込まれます。上場廃止の可能性も強まっています。
しかし、東芝には政財官一体となった原発推進路線についての根本的な反省はありません。
怒号が飛び交う
3月30日に開かれた臨時株主総会は、怒号が飛び交う総会となりました。WHを買収した経営判断の誤りを追及する質問が相次ぎました。「株主を納得させようという誠意がない」「議事の進行が一方的だった」とあきれ果てる株主も。今後も原発事業を続ける方針にたいし「原発は危ない仕事。まだ国内で原発を手掛けると言っているがやめた方がいい」と、原発推進姿勢を批判する声もあがりました。
分社化した「東芝メモリ」の売却益は原発事業によって膨らんだ損失の穴埋めに使われます。労働者の間からは、「株式の過半を売却することになって、不安が高まっている」(東芝OB)との声があがっています。
東芝は、3度目の決算延期は回避したものの、社会的信用は失墜しました。その場しのぎの対応では、再生の道は極めて厳しいと言わざるをえません。
(金子豊弘、斎藤和紀)
(「しんぶん」赤旗2017年4月12日より転載)