「島根の自然を大切にした、安全で豊かなエネルギー社会に大きく転換するため、全国で初の『みどりのエネルギー条例』(島根県エネルギー自立地域推進基本条例)制定を」。こう呼びかけた島根原発・エネルギー問題県民連絡会は、県内の全市町村選挙管理委員会に9万2827人(有権者の16%)の直接請求署名を提出しました(6、7日)。署名を支えた人たちの思いを聞きました。 (島根県 桑原保夫)
条例制定の直接請求には有権者の50分の1以上の署名が必要ですが、今回提出分は約8倍になります。昨年(2013年)10月21日からの署名活動。受任者8000人が街頭や家々を訪問し、訴えました。
連帯感生んだ
有権者比で最も署名が多かったのは「島まるごとブランド化」で地域づくりをしている日本海に浮かぶ隠岐諸島の海士(あま)町です。有権者の39%、769人が署名しました。島で環境に関することに取り組む「あま環境ネットワーク」会員の波多章代さん(72)は話します。「原発は怖いし、今後も原発に頼る国のエネルギー政策には不安でした。町議会議長でネットワーク代表の上田正子さんとお願いに回り、全地区で受任者への協力が得られました。条例案には賛同の声が多く寄せられました」
健康や環境を重視する有機農業が盛んな県西端の吉賀(よしか)町でも有権者の34%、1896人が署名しました。約100人が受任者になりました。
福原圧史さん(64)は「旧柿木村の人たちは将来を担う子どもたちにいい環境を、と懸命に有機農業をやってきました。旧柿木村では約55%が署名し、『原発輸出など何を考えているのか』という人もいっぱいいた。今の政治はあまりにも刹那(せつな)的だ」と、署名で地域の連帯感が生まれたと明かします。
毎週街頭立ち
同連絡会の保母武彦事務局長・島根太名誉教授は「署名をお願いした人の9割以上が署名に応じる状況が、どの地域でもあった。松江に原発があることに非常に強い危機感がある」といいます。
県庁所在地の松江市では、幅広い団体で同松江地域連絡会が結成され、毎週街頭署名。「原発から10キロ以内だが逃げられない」などの声が寄せられました。
同県民連絡会は受任者を組織するための学習会を各地で開催し、太陽光や木質バイオマスなど安心安全なエネルギー源の開発と普及、社会の省エネ化、原発からの計画的な脱却など条例案の基本的考え方を何度も説明。「原発の是非だけでなく、エネルギーを再生可能エネルギーの方向に。エネルギー政策に地方自治確立を」と呼びかけました。
同県民連絡会は2月上旬、県条例の制定請求を予定。2月県議会で審議の見通しです。
日本共産党の尾村利成県議団長は話します。「短期間で有権者の16%の署名が集約されました。県議会は県民の願いを重く受け止めるべきだ。条例可決に全力を尽くしたい」