日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 増え続けるトリチウム汚染水・・タンク増設追いつかず/福島第1 海洋放出など処分法検討

増え続けるトリチウム汚染水・・タンク増設追いつかず/福島第1 海洋放出など処分法検討

約1000基もの汚染水タンクが並ぶ福島第1原発=2016年2月
約1000基もの汚染水タンクが並ぶ福島第1原発=2016年2月

 東京電力福島第1原発で放射能汚染水を処理した後に残る高濃度の放射性物質トリチウム(3重水素)を含む水の処分方法をめぐり、国の汚染水処理対策委員会が設置した小委員会の初会合が11月11日、経産省で開かれました。事故から5年8カ月。「コントロール」どころか、行き先がないトリチウム水を貯蔵するタンクの増設が追いつかないなか、薄めて海洋に放出する案などが検討されています。

(唐沢俊治)

 「(トリチウム水を海洋などに)放出すると拡散させるわけだから、イメージとしてコントロールできていないと捉えられる」「5年たっても(汚染された魚の)イメージが払しょくされていない。漁業はまだ特殊な状況にあることを理解してほしい」。会合に出席した委員から懸念の声が上がりました。

除去できない

 トリチウム水は、通常の水と化学的性質がほぼ同一のため、分離するのは困難。汚染水から62種の放射性物質を除去する「多核種除去設備(アルプス)」でも取り除くことができません。

 福島第1原発で生じた放射能汚染水の量は現在、建屋やタンクなどに計100万トンを超えました。このうちアルプスによる処理が終わった1リットル当たり数十万〜数百万トンとみられる高濃度のトリチウム水は約69万トン。貯蔵タンクの容量約71万トンに迫っています。

 そのため、汚染水の発生量に合わせてタンクを増設するのではなく、タンク容量に合わせてアルプスの運転を抑制する状況が続いています。

 「トリチウムをどう扱うかは、東京電力がしっかり責任を持って決めるべきであると思う」。福島第一廃炉推進カンニー・プレジデントの増田尚宏氏は9月29日の記者会見でこう述べたものの、いまだに具体的なことは何も示していません。

 トリチウム水の処分方法をめぐっては、国の作業部会が6月、①地層注入②海洋放出③水蒸気放出④水素放出⑤地下埋設の五つの方法について、技術・コスト面から評価をまとめました。タンクにため続けることは、選択肢に含めませんでした。(図)

osensui-syori

 その中で、80万トンのトリチウム水を1日に400トン、国の放出基準(告示濃度限度=1リットル当たり6万ベクレル)まで薄めて海洋放出すると仮定した場合、費用は34億円、期間は7年強と試算。地層注入では、調査費用を含め4000億円を超え、期間は16年以上というケースもあります。

 今回の小委員会は、処分方法は風評に大きな影響が及ぶため、社会的観点も含めて総合的に検討するという目的で設置されました。

漁業者ら反対

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、海洋放出すべきだと主張しています。しかし、福島県漁業協同組合連合会をはじめ漁業関係者は、海洋放出に強く反対しています。

 東電は現在、原子炉建屋の山側の井戸「地下水バイパス」でくみ上げた地下水などを海洋へ放出する際、1リットル当たり1500ベクレルを基準にしています。漁業者らが″苦渋の選択″として受け入れたものです。国の作業部会が想定する濃度のトリチウム水を、1500ベクレルまで薄めて処分したと仮定すると、300年近くかかることになります。

(「しんぶん赤旗」2016年11月12日より転載)