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偽装再建 東電新事業計画②・・際限のない国民負担

かつて霞が関の官僚が「巨大になりすぎた恐竜」に例えた東京電力-。その巨大な恐竜が福島原発事故で瀕死(ひんし)に陥ったとき、1・9兆円の緊急融資で危機を救ったのが3メガバンクをはじめとした大手金融機関でした。

そこには金融機関ならではの打算が働いていました。東電が破たんすればこれまで貸し込んだ融資が回収不能になり、保有する東電の株や社債も紙切れに。さらに、事故に乗じてもうける思惑すらありました。

経産省の約束

嘉悦大学の小野展克准教授は、「福島事故まで、東電は銀行から借りてやるという態度だった。それが貸してくださいとなる。銀行は、ここで大きく勝負して貸し出せば利ざやを稼げると考えた」と指摘します。事実、2011年4月から13年6月の間に東電が払った借入金の利息は824億円に上ります。

小野氏はまた、緊急融資の貸し倒れを懸念する当時の三井住友銀行頭取にたいして経済産業省が「融資の保全」を約束したことは公然の秘密、とも語ります。

政府は、東電を破たんさせず、銀行や株主にも負担を求めません。その先にあるのは際限のない国民負担です。

安倍政権は昨年(2013年)12月、福島復興の新指針を発表。除染費用2・5兆円について国(原子力損害賠償支援機構)が保有する東電株の売却益を充てることや、汚染土壌の中間貯蔵施設整備費1・1兆円を税金でまかなうことを打ち出しました。

そのため、これまで5兆円だった東電支援の交付国債の上限を9兆円に拡大しました。

国は12年に1兆円で東電株19億4千万株を取得(保有率54・69%)し、東電を実質国有化しました。除染費用2・5兆円を株の売却益でまかなうには、1兆円で購入した株が3・5兆円に高騰する必要があります。

「非常に甘い」

東電の事業計画は20年代初頭の配当再開を目指しています。小野氏は、配当再開は株価引き上げを狙ったものだと見ます。政府は20年代後半から30年代にかけ段階的に株を売却する計画です。しかし、その「売却額の目安は決まっていない」(経産省担当者)のが実情です。

名城大学の谷江武士教授は「東電が、福島第1原発の廃炉作業や原発事故の賠償を進めながら恒常的に利益を上げ、配当まで出すというのは、非常に甘い」と批判します。

事業計画は、廃炉費用として既に手当てされている1兆円に加え、今後10年間でさらに1兆円を確保することを盛り込みました。

谷江氏は、廃炉費用が2兆円で済む保証はないと指摘。株価についても「保有率5割を超える株主が株を放出すれば、下がると考えるのが普通だ」と語ります。思惑が外れれば結局は税金頼みになりかねません。

実は、事業計画でも目指している株式価値は30年代前半で総額4・5兆円にすぎません。国の保有率に当てはめると2・5兆円弱。除染費用を賄うのに必要な株式価値3・5兆円とつじつまが合いません。

一方、除染費用を2・5兆円と見積もった環境省の試算にも疑問がでています。独立行政法人産業技術総合研究所が昨年7月に発表した除染費用は最大5兆円です。環境省は2・5兆円の試算の詳細を公表していません。

除染費用の削減は除染範囲の縮小や基準緩和につながります。被災地の切り捨てです。

(つづく)

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