東京電力福島第1原発事故に伴う、福島県南相馬市の避難について、政府は7月1日をめどに避難指示を解除する方針で、5月15〜22日に4回の住民説明会を行いました。住民からは除染、生活インフラの整備が十分でないことなどから、不安の声が出されました。
(伊藤佑亮)
避難指示解除が予定されているのは南相馬市小高区、原町区の帰還困難区域を除く、居住制限区域と避難指示解除準備区域の3516世帯1万967人。小高区の全域、原町区の一部にあたり、これまで避難指示解除された中で最大規模になります。
「戻りたいが」
住民説明会には4回で825人が参加。政府担当者は避難指示解除について、年間の追加被ばく放射線量が20ミリシーベルト以下になったこと、住宅除染が未同意などの世帯を除く3997件で終わったこと、小高病院が4月から週5日開業したなど生活インフラ整備が進んだことをあげました。
しかし、もともと避難指示解除の放射線量の基準、年間20ミリシーベルトは極めて高い数値(通常時の限度は年間1ミリシーベルト)です。また、小高病院は入院機能再開の見通しがないばかりか、小高区にある7診療所のうち5診療所、5歯科は全て休業のまま。農地除染は3分の1程度しか進んでいません。
住民からは「解除は早い。小高区西部はまだ線量も高いし、家は2回除染しても線量が下がらない。家屋解体を申し込んでいるが未着手だ」(67歳の女性)、「解除になったら戻りたいが家の隣が草のはえた田んぼで除染しいていないように感じ、不安だ」(63歳の男性)、「農地除染を早く進めてほしい。営農が再開できない」「医療施設はまだまだ少ない。上から目線の解除ではないか」・・などの声が相次ぎました。説明会は予定時間を大幅にオーバーしました。
環境づくりを
南相馬市では、市の子育て世代向け定住奨励金や県の帰還にあたる引っ越し費用の補助の活用、生活に欠かせない医療スタッフの確保、商業施設の企業誘致で帰還希望者が安心して戻れる環境づくりを進める考えです。
市復興企画部の担当者は「安心して日常生活を送れるよう環境づくりを進めることは試行錯誤です。若い働き世代や子育て世代にも戻ってこられるようにしたい」と話します。
小高駅前の商店には昨年9月から日用雑貨のおいてある商業仮設店舗も営業しています。
避難先から小高区に通って商売を営む50代の男性は「戻るか戻らないかどちらが正しくて間違いということはない。ここで生まれ育ったので解除になれば戻りたいと思う。息子たちは避難先で住まいを見つけ通いながら一緒に仕事をしている」と話しました。
日本共産党の渡部寛一市議は「避難指示解除は早いか遅いかが問題ではなく、住民が本当に帰還して生活できるかどうかが大切だ。これまで避難が解除されたところでは、賠償や支援が打ち切られたりしてきた。解除は住民が安心できるよう進めなければならない」と話しました。
(「しんぶん赤旗」2016年5月26日より転載)