−−こうした原発延命策をどうみていますか。
大島堅一 原発延命策が実施された大きな理由は、電力システム改革(電力自由化など)にあります。4月から小売りの全面自由化、2020年をめどに「総括原価方式」の料金制度がなくなります。そうなると、原発が生き残れないからと。
自由化に逆行
しかし、電力自由化の本来の目的は電源間の競争や電気事業者間の競争を促して、地域独占をなくすことです。それで生き残れないというのは、地域独占と総括原価方式の料金制度が、原発を支えてきたことの裏返しです。
延命策が実施され効果を持つなら、再生可能エネルギーなど電源がいろいろあるのに原発の電源だけを、原子力を持つ事業者だけを保護して他の電源は競争という、市場競争になじまないことになります。電力自由化の目的である公正な競争や、無駄をなくすことにも大きく外れます。これまでも原発は政策的に著しく優遇されてきたのですから、まるで放蕩(ほうとう)息子が初老になってもスネをかじらせろと言っているようなものです。
原発の一番大きなリスクは、事故やトラブルなどで止まってしまうとか、原発を動かすことで出る使用済み核燃料を処理した後の高レベル放射性廃棄物の処分が見通せないことなど、わからないリスクがたくさんあることです。当然、そのリスクは原発で儲(もう)けている事業者が持つべきです。それが資本主義の原則です。原発延命策は、原発で儲けた利益だけは電力会社が得て、原発が持つ特徴的なリスクは国民・電気利用者にかぶせる、という強欲なものです。
−−それがまかり通るのはなぜでしょう。
大島堅一 非常にわかりづらいやり方をしているからです。原発のコストが電気料金や国費でまかなわれていることがちゃんと説明されず、追加的に原発コストを払わされていると国民が思わないまま、延命策がつくられています。
おかしいのは、政府も電力会社も、片方で原発コストは安いと言ってきました。だったら延命策は必要ないでしょう。でも延命策が必要だと言うのです。どちらが本当かといえば、延命策を講じているのだから、そちらが本当なのです。
民意に反する
政府が、原発を「ベースロード電源」としたエネルギー基本計画を2014年に決めましたが、国民的議論もまったく実施しませんでした。再稼働に反対の国民の意思に逆らい、公正さに欠けます。
エネルギー政策は非常に長期的に取り組むべきもので、国民の意思を反映させる形で政策を決めるべきです。原発をやめた方がいいという人が多数なのですから、そういう方向にしたらいい。現実に事故を起こしたのだから、これに依拠することはもう理由がないと思います。
(おわり)
(「しんぶん赤旗」2016年4月5日より転載)