東京電力福島第1原発の1~4号機の建屋周辺の雨水を排水する「K排水路」の出口を外洋から港湾内へ付け替える工事が3月28日に完了しました。東電が同日の記者会見で発表しました。
K排水路をめぐっては、国の放出基準を大きく上回る放射能汚染水が外洋に流出する状況を長期間放置していたことが2015年2月に発覚。漁業者や地元住民が「苦渋の決断」として受け入れた地下水バイパスの排出基準と比べても数百倍の濃度でした。東電は14年4月までに流出を把握していましたが、公表せず、防止対策も取りませんでした。
批判を受けた東電は15年4月から、同排水路の汚染水をポンプでくみ上げ、別の排水路を経由して港湾内へ放出していましたが、大雨の時、たびたび外洋に流出していました。同年5月に、出口を港湾内に付け替える工事を始めていました。ただ、海に排水することは変わりません。
流出を知りながら公表しなかったことをめぐっては、地元の漁協から「信頼関係が崩れた」など厳しい批判が相次ぎました。海側遮水壁の閉合や、サブドレン計画の遅れにつながりました。
東電が15年3月に発表した資料によると、4本の主要な排水路から海への総流出量は、15年2月23日までの314日間だけで、全ベータ(ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質)が2890億ベクレル、放射性セシウムが2320億ベクレル、トリチウム(3重水素)が4242億ベクレル。その大半はK排水路からの放出で占めます。
(「しんぶん赤旗」2016年3月29日より転載)