被災地では、自力での自宅再建が困難な人や高齢者などのために災害公営住宅の建設がすすみ、順次入居が始まっています。今回は災害公営住宅でも実態調査をしました。
「困っていること、不安なこと」で一番多かったのは「近所づきあいが疎遠になった」ことでした。
災害公営住宅では、仮設住宅や震災前に暮らしていた地域でのつながりがバラバラになる場合がほとんどです。
宮城県石巻市の災害公営住宅に昨年4月から入居している清川たちよさん(82)
は、「近所付き合いがあまりなくなりました。仮設住宅にいるときは、近所に若い人もいて、いろいろやってもらいました。雪が降ったときの雪かきもしてもらいましたが、ここでは自分でしなくてはいけない」と話します。
1995年に起きた阪神・淡路大震災のときも、誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」は、災害公営住宅に入居してから急増しました。
災害公営住宅では、住民の孤立を防ぐ努力が始まっています。
「お茶っこ」開く
岩手県山田町のある災害公営住宅では、毎週月曜の午前中に、集会所で「お茶っこ」(お茶を飲みながらのおしゃべり会)を開いていました。
この住宅で暮らす鈴木康子さん(67)は、「このお茶っこにも初めは来なかったけど、誘われて来てみてよかった」と話し、別の78歳の女性も「ここでお茶っこをするのが一番の楽しみ」と笑顔を見せました。
家賃・交通の便
「困っていること、不安なこと」の2番目は「家賃」の問題でした。少ない年金が頼りなど経済的に苦しい人にとって家賃負担は重く、次第に引き上げられる家賃に不安を募らせる人が少なくありません。
「困っていること、不安なこと」の3番目は「交通の便が悪い」ことです。
前出の清川さんは、「仮設住宅にいたときよりも買い物が遠くなりました。車に乗せてくれる人がいればいいけど、そういう人がいない私のようなものにとって交通は不便」と話しました。
「災害公営住宅に移っても車がないので足に困る。バスを増やすか、コンビニかスーパーを近くにつくってほしい」と話す61歳の男性(石巻市の仮設住宅)もいました。
災害公営住宅に限らず、自動車の運転ができない高齢者などにとって、移動手段の確保は重要な課題になっています。
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2016年3月14日より転載)