東日本大震災から5年。本紙の被災者300人実態調査では、いっそう苦境に追い込まれた状況が鮮明になりました。実態調査で寄せられた復興と生活再建への願いは・・。
(東日本大震災取材班)
家を失った被災者にとって、仮設住宅から、再建した自宅や災害公営住宅に移ることは、避難生活から脱却するうえで重要なステップです。
見通しなし半数
しかし、仮設住宅を出られる展望が「半年以内」29%、「1年以内」22%で合わせて51%。残り49%はそれよりかかると回答し、「わからない・めどが立だない」と答えた人が33%に上ります。
福島県内では、1年以内に仮設住宅をでる展望をもてない人が63%、「わからない、めどが立たない」が45%を占め、東京電力福島第1原発事故の影響の深刻さを示しています。
仮設を出るのに時間がかかる理由を尋ねると(複数回答)、トップは「その他」75人。福島県内で「その他」が多いのですが、放射能汚染の影響と考えられます。
福島県楢葉(ならは)町からいわき市の仮設住宅に避難している67歳の女性は、「10年前に亡くなった娘の墓が故郷にあるので帰りたい気持ちはあるが、放射能が心配なので戻る展望はほとんどない」と語っています。
次いで「災害公営住宅建設の遅れ」42人、「土地造成の遅れ」35人、「建設資材・人手不足」22人となっています。
岩手県宮古市の仮設住宅に住む山根貴子さん(46)は、「自宅再建の予定が昨年8月だったのに、延び延びになっている。大工さんの人手の問題」と嘆きます。
老朽化の対策を
多くの仮設住宅が、建設から4年以上たちます。仮設住宅の本来の入居期間は約2年間とされており、老朽化も進んでいます。
多いのは「床がミシミシする」という声です。
「基礎部分が木造で簡単な造りだから」と住民は半ばあきらめています。
「2月になって雨漏りがあり、市に連絡して直してもらいました。こんなことは初めてというのは、石巻市の仮設住宅に住む会社役員の女性(58)です。
「結露が多く、カビがすごい」という声もあります。宮古市の仮設で暮らす40代の女性は、「母のせきが止まらない。病院で仮設のカビによるアレルギーといわれた」と訴えました。
老朽化が「起きている」と回答した人は44%で、昨年の55%よりは改善しています。
各自治体による不具合の点検・修理が一定行われていること、仮設住宅から移る予定が決まっている人の場合、「多少の不具合は我慢する傾向」も指摘されています。
今後1年以上暮らす被災者も少なくないことから、仮設住宅の老朽化対策がいっそう求められます。
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2016年3月12日より転載)