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東日本大震災5年・・被災者に寄り添った政治こそ

 東日本大震災の発生からきょうで丸5年です。約1万6000人の命が奪われ、約2500人が行方不明となった大惨事から5年―。復興の歩みはまだまだ遅々としており、被災地の現状は深刻です。ストレスなどによる「震災関連死」は3400人を超え、原発事故で故郷を追われた人たちの帰還の見通しもたたないなど震災は現在も進行中ともいえる状況です。被災地の苦難を直視しない安倍晋三政権の姿勢にいら立ちの声があがります。国は、被災者の願いを正面から受け止め、寄り添った支援を、抜本的に強めるべきです。

「人災」は許されない

 5年前の午後2時46分、日本の観測史上最大のマグニチュード9の巨大地震が東北3県をはじめ東日本一帯を襲い、大津波が東北や関東の沿岸部をのみ込みました。激しい揺れと津波により東京電力福島第1原発は制御不能に陥り、極めて深刻な原子力事故は、いまだ収束のめどもたちません。

 世界の災害史上でも前例のない複合的で広域的な大災害は、5年たっても、さまざまな形で被災者と被災地に大きな苦難をもたらしています。むしろ時がたつにつれ、避難生活の長期化などによって新たな問題が次々噴出しています。

 17万人以上がいまも自宅を確保できず、不自由な避難生活を強いられている状況は、あまりにも異常です。遅れていた災害公営住宅の建設と入居もようやくすすんできましたが、家賃負担などがネックとなり、入りたくても入居できない被災者が生まれています。

 一部自治体で仮設住宅閉鎖の動きも出るなか、再び行き場を失う被災者が出かねない状態です。低所得者への家賃補助などを検討している自治体もありますが、財源確保に頭を悩ませています。被災者の住まいを保障するため国は財政など、積極的支援をすべきです。

 災害公営住宅に入居した人の人的つながりが薄れたり、仮設住宅に残された人が話し相手をなくしたりして、孤立を深め「孤独死」にいたる状況ほど、悲惨で痛ましいことはありません。大災害のなかで九死に一生を得た人たちが、復興のなかで必要な支援を受けることもなく命を落とすなどというのは、まさしく「人災」です。高齢者だけでなく、困難を抱える働き盛りの人たちの心身のケアを抜本的に強めることが急務です。

 被災者が疲弊して体調を崩す人が多いなか、医療費負担の重さは大問題です。生業(なりわい)の回復が遅れ収入もままならない被災者に、必要な医療を保障するためには医療費負担の軽減措置が不可欠です。

 国は医療・介護体制の整備とともに、負担減免措置の復活を検討すべきです。

支援必要な人がいる限り

 安倍政権は今年度で「集中復興期間」を終え、新年度から「復興創生期間」にするとしていますが、被災地支援を縮小させる「区切り」にしてはなりません。支援を必要としている人がいる限り、支援を充実させることはあっても手を緩めることがあってはなりません。

 被災地の暮らしと経済をさらに苦境に追い込む来年4月からの消費税増税や、被災地の農業・水産業を直撃する環太平洋連携協定(TPP)を推し進めることなど絶対に許されません。被災者が明日への希望の持てる政治への転換がいよいよ必要となっています。


 

きょうの潮流

「頼んだよ。おれは職場に戻る」。宮城県南三陸町の仮設住宅で暮らす内海明美さん(44)が町の職員だった夫と交わした最後の言葉でした。2人の子どもを妻にたくして緊急配備についた夫は、津波に襲われ行方不明に

 ▼避難所で「覚悟しようね」と中学2年だった長男を抱きしめながら、いちるの望みは捨てませんでした。しかし、4カ月後の再会は悲しいものに。享年53歳。「物静かで優しい人でした。相談するといつも『好きにやっていいよ』と背中を押してくれた」

 ▼内海さんは震災後、コミュニティー・カフェ「こもんず」を仮設店舗で開きました。避難所で知り合った子どもたちや地域の人たちの交流の場をめざす同店。本店舗の建設場所や資金繰りなど難題だらけですが、「生かされた命、しっかり前を向いて生きていきたい」

 ▼「3・11」から5年。家族や家財を失いながら必死で立ち上がろうとする多くの被災者がいます。取材で出会った漁師さんやラーメン屋さんが少しずつ前に進んでいる姿は、わがことのようにうれしい

 ▼しかし、再建が順調でない人も少なくありません。8回目となる本紙「被災者300人実態調査」では、8割の自営業者が再建困難と回答。仮設住宅から抜け出せる展望のない人も多数います

 ▼取材中に思わず涙がこぼれそうになる厳しい現実を聞くたびに痛感します。現状打開のために少しでも役に立つ記事をもっともっと書かなければと。「被災者に心を寄せる」。「赤旗」震災報道の原点にたって。

(「しんぶん赤旗」2016年3月11日より転載)