日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 東日本大震災5年 仮設長引き健康崩す 高血圧、不眠、うつ・・76%「国・東電 責任果たさず」

東日本大震災5年 仮設長引き健康崩す 高血圧、不眠、うつ・・76%「国・東電 責任果たさず」

 東日本大震災・原発事故から5年を前に本紙が実施した被災者300人実態調査では、長引く仮設住宅での生活のなかで心身の健康を崩している人が半数を超えています。

被災者300人調査

2016031115_01_1 健康状態を尋ねると、被災3県全体では「悪い」30%、「やや悪い」24%で、過半数の54%が健康を崩しています。

 宮城県塩釜市の災害公営住宅に住む69歳の女性は、「病気らしい病気はほとんどしたことがなかったが、避難生活がたたったのか、インフルエンザなど体調を崩しやすくなった」といいます。

 同県多賀城市の災害公営住宅に昨年入居した漁業の男性(67)は、「仮設生活が予想よりもずっと長引いた。妻も狭い仮設住宅であまり動かなくなり、体重も増え足腰も弱り、遠出をするときは杖(つえ)をつくこともある。見ていて本当にかわいそうだ」といいます。

 岩手県山田町の災害公営住宅に暮らす78歳の女性は、「震災後に夫を亡くしました。血圧や血糖値が高く、薬漬け。うわべでは笑っていても、夜は先のことを考えて眠れない」と訴えます。

精神的ストレス

 精神的なストレスを訴える声が多くなっているのが特徴です。

 宮城県南三陸町で被災した女性(70)は同県登米市の仮設住宅に住んでいます。「部屋が狭いことには慣れるかなと思ったけど、慣れない。寝られないし、食べるのがつまらなくなり、2カ月で8キロ体重が減った」といいます。

 「震災後、3年くらいは無我夢中だった」という同県石巻市の仮設で暮らす66歳の女性は、「昨年くらいから、落ち着いてきたな、と思ったら、精神的に落ち込み、うつっぽくなってしまった。夫は、津波に流されたけど、なんとか助かりました。いまになってフラッシュバック(記憶や感情が突然よみがえること)があるといいます」と語りました。

福島なお苦しく

 福島県で原発事故の影響で避難生活をおくっている人の苦しみはひとしおです。健康状態が「悪い」は42%、「やや悪い」24%で、合わせて66%が健康を害しています。岩手県、宮城県では「悪い」「やや悪い」を合わせると47%です。それと比べ、顕著に高くなっています。

 全面賠償と健康や暮らしを守る対策で国と東京電力が責任を果たしているか尋ねると、「まったく果たしていない」43%、「あまり果たしていない」33%で、合わせて76%が「責任を果たしていない」と答えています。

 同県浪江町から福島市の仮設住宅に避難している52歳の主婦は、「原発事故さえなければ、ストレスで体調を崩すことはなかった。事故の責任をとるというなら、元の普通の生活を返してほしい」と訴えました。

 ※300人実態調査の詳細は12日以降連載します。

調査の場所と回答者の年代

 調査した場所【岩手県】大船渡市、釜石市、宮古市、陸前高田市、大槌町、山田町【宮城県】仙台市、石巻市、気仙沼市、塩釜市、多賀城市、登米市、名取市、女川町、七ケ浜町、南三陸町【福島県】福島市、会津若松市、いわき市、郡山市、相馬市、伊達市、南相馬市、桑折町、新地町、合計3県18市7町

 回答者の年代【20代以下】2%【30代】3%【40代】6%【50代】7%【60代】31%【70代】30%【80代以上】21%

主な質問と回答(グラフにした項目は除く)

 ★仮設住宅などを出て次の住まいに移るまで、時間がかかる理由を教えてください(複数回答可)

  (1)災害公営住宅建設の遅れ 42

  (2)家賃負担が重い     6

  (3)災害公営住宅の入居資格がない 5

  (4)土地造成の遅れ     35

  (5)自宅再建資金の不足   20

  (6)建設資材・人手不足   22

  (7)その他         75

 ★(仮設住宅入居の方に)建て付けのいたみやカビなどの問題はおきていますか

  (1)おきている 96(44%)

  (2)とくにない 122(56%)

 ★(災害公営住宅入居の方に)困っていること、不安なことを教えてください(複数回答可)

  (1)家賃の負担 11

  (2)間取りや断熱など住居の問題 3

  (3)近所づきあいが疎遠になった 13

  (4)交通の便が悪い 7

  (5)その他 9

 ★(震災前に給与所得者だった方に)現在、仕事についていますか

  (1)同じ仕事についている 17(18%)

  (2)転職した 20(21%)

  (3)失業中 28(29%)

  (4)年金生活 19(20%)

  (5)その他 13(13%)

 ★(農業、漁業、自営業だった方に)生業の再建は進んでいますか

  (1)再建できた 11(13%)

  (2)再建のめどはついた 6(7%)

  (3)あまり進んでいない 6(7%)

  (4)めどがたたない 60(72%)

 ★被災者の生活と生業が再建するまで必要な公的支援(被災者生活再建支援金の上限300万円から500万円への引き上げなど)を実施してほしいと思いますか

  (1)大いに思う 191(66%)

  (2)少し思う 51(18%)

  (3)そうは思わない 18(6%)

  (4)その他 29(10%)

 ★被災者への医療・介護費免除措置は必要ですか

  (1)必要なので継続・再開してほしい 268(92%)

  (2)必要ない 11(4%)

  (3)その他 12(4%)

 ★安倍首相の経済政策「アベノミクス」は被災地の復興に役立っていると思いますか

  (1)思う 16(5%)

  (2)思わない 206(70%)

  (3)その他 72(25%)

 ★安倍政権は消費税を10%に増税しようとしていますが、被災者の暮らしへの影響は

  (1)影響は深刻 204(69%)

  (2)少し影響ある 62(21%)

  (3)影響ない 11(4%)

  (4)その他 19(7%)

 ★安倍政権は原発を再稼働しようとしていますが、どう思いますか

  (1)賛成 15(5%)

  (2)反対 218(74%)

  (3)その他 62(21%)

 ★(福島の方に)原発事故前に住んでいた地域に戻る展望はありますか

  (1)戻れた・戻る予定 15(13%)

  (2)展望はある 17(15%)

  (3)展望はあまりない 22(19%)

  (4)展望はない・戻ることはあきらめた 62(53%)

 ※数字は人数、計300人。四捨五入のため、各項目の合計が100%にならない場合があります。項目によって回答数は違います。

(「しんぶん赤旗」2016年3月11日より転載)