東日本大震災の被害を受けた岩手、宮城両県で水産業の再生が進みます。漁港などの施設が整備され、2015年の水揚げ量は、宮城が震災前の78%、岩手が67%まで戻りましたが、売上高の回復は鈍く、販路開拓という次の課題もはっきりし
てきました。福島県では魚種を制限した操業が続き、水産復興を東京電力福島第1原発事故が阻んでいます。
岩手、宮城両県は大震災で壊滅状態となった漁港や保冷倉庫などを順次整備。養殖業は再開希望者の施設が全て復旧しました。宮城ではワカメやギンザケの生産量が震災前の水準に戻っています。
15年の水揚げ量は宮城が25・1万トン、岩手が11・2万トンですが、前年よりもサンマなどが不漁だったため、実力はもっと上とみられます。世界有数の漁場が沖合に広がる三陸沿岸で。水産業が5年前の輝きを取り戻すまであとひと息です。
ところが、水揚げ量が売り上げに反映されていない実態が、東北経済産業局の調査で浮かび上がりました。青森を含む4県で政府の「グループ補助金」を活用した水産・食品加工業者のうち、売上高が震災前の水準に戻ったのは25・9%と全業
種で最下位。震災前の半分以下にとどまっているのは34%で、回復が遅れています。
水産復活へ販路を広げる挑戦が続きます。
一方、原発事故の影響を受ける福島県では主力の沿岸漁業が試験的な操業にとどまります。15年の水揚げ量は震災前の15%にすぎません。
試験操業は12年6月に始め、対象海域を拡大。魚種も3種から72種(16年1月27日現在)に増え、県外にも出荷しています。県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は「本格操業への環境が整いつつある」と話します。原発20キロ圏内と定めた漁業自粛海域を縮小する方針です。
ただ、原発から汚染水が流出したときなどにこれまでも操業中断を余儀なくされており、不安定な状況に変わりはありません。
(「しんぶん赤旗」2016年3月8日より転載)