宮城県では現在、被災者の医療費免除は被災3県で唯一、県が財政負担しないなかで、住民税非課税世帯の国民健康保険加入者に限定して行われています。しかし、2016年度からの国の支援継続が明示されず、継続する市町村と打ち切る市町村に分かれています。
仙台市の災害公営住宅で1人暮らしをする年金生活の女性(66)は避難生活のなかで持病が悪化し、二つの病院に通っています。仮設住宅から昨年移転し、家賃も発生。新聞をやめ、洗濯も週に1回にまとめています。「今もなんとか暮らしているのに、医療費の支払いが加われば生活していけるかどうか・・。病院に行く回数を減らすことになると思う。子どもは県外に住んでいるし仮設住宅の仲間とも離ればなれだから、部屋で倒れでもしたらどうなってしまうのか本当に怖い」といいます。
多賀城市の災害公営住宅に夫婦で入居している小山誠さん(74)は「多賀城は継続が決まったけど対象も広げて、県内全市町村で継続してほしい」と話します。
宮城県保険医協会が昨年11月〜1月に実施したアンケートでは、負担免除が終了した場合、30%が「受診回数を減らす」、7・8%が「受診をやめる」と回答するなど、受診抑制の懸念が大きくなっています。
宮城県民医連が11月に仮設住宅を訪問して行ったアンケートでも「震災で仕事を失い、今はパート。健診でがんが見つかり手術を受ける。1人暮らしで医療費、療養費が心配」など不安の声が寄せられています。
後期高齢者については、県後期高齢者医療広域連合は15年度で免除を終了することを決めています。
塩釜市で海産物の問屋を営む吉田勝義さん(77)は「塩釜市は医療免除を継続するので家族の医療費は一安心だが、自分は後期高齢者で胃の全摘の手術を受けた身なので、今後が不安です」と話します。
4日現在で16年度以降の医療費免除を決めているのは、石巻、気仙沼、東松島、塩釜、多賀城、名取の6市と七ケ浜、松島の2町にとどまっています。
東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター、県社保協、県民医連など市民団体や日本共産党が減免措置の継続の申し入れを行っています。
継続を表明した自治体でも、石巻市の菅原秀幸副市長が日本共産党の小池晃副委員長と党県議団との懇談で「継続しますが、財政的には厳しい」と述べるなど、県の支援再開が重要となっています。
日本共産党の遠藤いく子県議団長は2月の代表質問で免除継続へ県の財政負担をするよう県に求めましたが、村井嘉浩知事は「県が口をはさむべき問題ではない」と答弁し、支援を否定しています。
(高橋拓丸)
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2016年3月6日より転載)