北陸電力志賀(しか)原発(石川県志賀町)の1号機原子炉直下などを通る断層について、原子力規制委員会の専門家チームは3月3日、「活断層と解釈するのが合理的だ」とする評価書の最終案を了承しました。今後、細かな修正をへて規制委に報告された後、原発の新規制基準にもとづく審査で、「重要な知見」として扱われます。
北陸電力は活断層を否定しています。しかし、新規制基準は、将来動く可能性のある断層の上に重要な施設を設置することを認めていません。活断層の有無を最終的に判断する審査で専門家チームの評価が覆らなければ、1号機は廃炉を迫られることになります。
専門家チームが昨年7月にまとめた評価書案は「活断層の可能性は否定できない」となっていました。その後、別の専門家からの意見を踏まえ、今回の評価書案が示されました。
敷地内には8本の断層が走っています。評価書案は、1号機原子炉直下を走る「S―1」と呼ばれる断層と、2号機の冷却用の海水を取り込む重要配管の下を通る「S―2」「S―6」断層を取り上げています。
「S―1」については、新規制基準で活断層の定義となった後期更新世(12万~13万年前)以降に活動した、と解釈するのが合理的だと判断。「S―2」「S―6」についても、「活動した可能性がある」としました。評価書案はまた、1号機原子炉建屋などの建設時の際に現れたS―1の形状を示す写真やスケッチ、敷地周辺の断層のさらなる調査など6項目について「データの拡充が必要」としています。
北陸電は、2号機の再稼働へ向けて14年8月に適合性審査を申請。敷地内の断層についての結論が出されていないため、事実上審査が進んでいません。
原発脱却こそ賢明・・児玉一八原発問題住民運動石川県連絡センター事務局長の話
より踏み込んだ表現で認識を示しており、活断層の可能性が否定できないというのが結論。北陸電力はデータを出してきても、活断層であることを否定できていません。北陸電力は、この結論を受け止めて志賀原発を廃炉にすべきです。
原子炉建屋の真下に断層がある1号機はアウトと宣告されました。2号機も、重要施設である冷却水を取水する配管やタービン建屋の下を通っている断層があります。改修して再稼働を目指すのではなくて、無駄なお金を使うのはやめて、資金や技術力は自然エネルギーの開発、普及に振り向けるべきではないでしょうか。
北陸電力は、9電力の先頭を切って原発から脱却すべきだし、それが最も賢明な判断です。今回の結論を県民に広く知らせ、廃炉を求めていく運動をいっそう強めたいと思います。
志賀原発 北陸電力が、日本海に面した能登半島の石川県志賀町に建設した原発。福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)2基の原子炉があり、1号機は1993年に運転を開始し、出力は54万キロワット。2号機は2006年に運転を開始し、出力は135・8万キロワット。2007年、操作ミスで起きた1号機の臨界事故を8年間隠していたことが発覚。1号機ではその後も制御棒にかかわる事故が続きました。11年3月から定期検査のため運転停止中。志賀原発には周囲に活断層がいくつもあり、13年に北陸電がこれまで活断層でないとしていた、志賀原発から約1キロの福浦(ふくら)断層について活断層と認めています。
(「しんぶん赤旗」2016年3月4日より転載)