昨年(2015年)12月で福島県の避難者が10万人を切ったということがニュースになりました。しかし、5年になるのに、なお約10万もの人が避難を余儀なくされているという原発事故の重みをかみしめる必要があります。(県内避難5万5463人=2月8日現在、県外避難4万3270人=1月14日現在)
災害関連死は2016人と2千人を超えました。津波などによる直接死1604人を大きく超える数です。
切り捨ての施策
その中で、国と東京電力が進めようとしているのが県民切り捨ての施策です。
政府は2017年3月までに帰還困難区域以外の地域の避難指示を一律解除し、それに伴い賠償も打ち切る方向を示しています。東電は避難区域外の営業損害については、7月分まで合意すれば、直近の年間逸失利益の2倍相当を払うとしていましたが、将来分は出せないと値切りにかかってきました。いま、それを許さない運動の真っ最中です。農業損害賠償は避難区域も区域外も今年12月以降の指針はなく、打ち切りが懸念されます。
賠償が早期に打ち切られた地域の経済苦は深刻です。1月、川内村の自治会長さんらと東電交渉を行ったのですが、会長さんは「震災前まで年金だけで生活してこられたのは、自分の食べる分の野菜を作り、山菜を取り、自給自足的な暮らしだったからで、放射能で自然が破壊され、今は何でも買わなくてはいけない。とても暮していけない。せめて生活費の支援を」と話していました。
除染について、環境省は昨年12月に森林全体を対象としては行わない方針を出しましたが、県民の要望もあり「里山」については行う方向に見直しが始まっています。
避難解除には、ライフラインや医療機関、商業施設、生業(なりわい)の再建などとのリンクが必要です。地域により実情は異なるのに、一律解除はおかしい。
全町民避難自治体で最初の解除が15年9月の楢葉町だったのですが、事故前の人口8000人に対して町に戻ったのは440人くらい、わずか5%程度です。
政府指示によらない″自主避難者″への住宅無償提供が17年3月で終わりとなり、県は独自予算で低所得者(母子避難者など二重生活世帯への収入要件緩和有り)を対象に2年間の家賃の一部を補助します。
避難者置き去り
被災者支援が縮小されるなかで、国と県が打ち出しているのが福島県浜通りに、ロボット開発拠点などを建設する福島・国際産業都市(イノベーション・コースト)構想です。避難者を置き去りにして、大企業だけに恩恵があるものになるのではないか、今後のチェックが必要です。
福島第1原発の事故収束、県内原発全基廃炉、完全賠償、除染の徹底、県民の健康対策など「オール福島」の願いを前に進めるために奮闘したいと思います。
(「しんぶん赤旗」2016年3月1日より転載)