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エネルギー基本計画政府案・・福島は置き去りか

14-02-26keikaku 東京電力福島第1原発事故から3年を目前に安倍晋三政権が発表した「エネルギー基本計画」案は、いまだに14万人が避難生活を送っている現実を直視せず、原発推進・再稼働へと突き進もうとしています。
(金子豊弘、佐久間亮)

原発回帰を総仕上げ

「福島原発事故で苦しんでいるわれわれのことを、政府は片隅に追いやろうとしている。事故に対する反省が全然みられない。被災地の実情を巧妙に隠し、本当のことを国民に知らしめないなかで原発を推進しようというのは、暴挙だ」

全町避難が続く福島県双葉町の井戸川克隆前町長は、安倍政権が発表したエネルギー基本計画案に憤ります。

安倍政権の基本計画案は、圧倒的な国民世論を受けて民主党前政権が打ち出した「2030年代原発ゼロ」すら投げ捨て、原発回帰を総仕上げするものです。今後、与党内での議論を経て、年度内の閣議決定を目指しています。

政府案は、原発をコストが安く安定的なベースロード電源と位置づける一方、再生可能エネルギーの太陽光や風力は需要の大きな時間帯だけを受け持つピーク電源と位置づけています。

再生可能エネの抜本的普及を図ったうえで足りない電源について議論するのではなく、原発の再稼働を前提とし、その枠内に再生可能エネの普及をとどめようというものです。原発の再稼働が進めば再生可能エネは普及しなくてもいいという逆立ちした議論です。

自民党内も矛盾噴出

経済産業省の意見公募に寄せられた原発ゼロを求める声に、経産省は逐一反論しています。異様な手法に安倍政権の国民世論敵視が表れています(図)。

政府案は、原子力規制委員会の規制基準に適合した原発は「再稼働を進める」としています。もうけ優先で、原発の早期再稼働を求める経済界の要求に応えるものです。

自民党のエネルギー部会の役員を務める原発立地銀出身の衆院議員は、規制委の審査は「設置許可だ」と言い切ります。「規制委の許可が出た原発を動かすなとは言えない。保健所で営業許可をもらった飲食店のおやじに、営業するなと言えないのと同じだ」

しかし、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「規制基準は安全基準ではない」と繰り返し発言しています。

原発について「安全性を全てに優先させる」(政府案)という言葉とは裏腹に、責任の所在さえあいまいなまま再稼働が進もうとしています。

一方、約50人が参加する自民党のエネルギー政策議員連盟は2月19日、原発について「過渡期の電源」との表現にとどめ、高速増殖炉計画の中止を求める提言を政府に提出。安倍政権の原発前のめりの姿勢が、同党内にも矛盾を生み出す事態となっています。

経団連会長「再稼働早く」

財界は、政府が閣議決定しようとしているエネルギー基本計画に対し、原発推進を政府に強く働きかけています。経団連の米倉弘昌会長は20日の山口県宇部市での記者会見で、「原発は重要なベース電源と位置づけられるようだ」とし、新増設について「新しいものは認めざるを得ない」と発言。さらに、原発再稼働について安全性を確保した上で「早くしてほしい」と求めました。

原子力産業の業界団体である日本原子力産業協会は原発について「引き続き活用していくことが極めて重要」1月6日)との考えを強調しています。

安倍晋三政権は1月、柏崎刈羽原発(新潟県)を7月以降に順次再稼働させることを前提にした東京電力の新しい総合特別事業計画(再建計画)を認定しています。

三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の3メガバンクは、原発再稼働を前提に東電に巨額の融資を実施しています。

「原発再稼働は喫緊の課題。国民は感情的に反対しているだけだ。政府は宣伝を尽くせ。財界奥の院は、安倍政権に非公式に圧力をかけ続けています。政府案は、これら原発利益共同体の強い求めに応じて原発を「重要な」電源と位置づけたものです。

意見公募の数値示さず

経済産業省は25日、昨年(2013年)12月に同省審議会がまとめたエネルギー基本計画の原案に対する意見公募(約1万9000件)の集約結果を発表しました。原発に対する賛否の割合は示しませんでした。

2012年に実施された意見公募では、寄せられた8万9000件の9割が「原発ゼロ」でした。今回経産省は寄せられた意見を「128の主要意見」に集約し、それぞれに同省のコメントを付与。原発ゼロを求める意見には、原発停止による輸入燃料費の増大などをあげ反論しています。

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