東日本大震災と福島第1原発から間もなく5年になりますが、いまだに17万人以上が避難生活を余儀なくされ、震災関連死も後を絶ちません。特に被害の大きかった岩手、宮城、福島3県の斉藤信、遠藤いく子、神山悦子・日本共産党県議団長に、現状と課題を聞きました。(4回で掲載します)
岩手県の被災者は今も応急仮設住宅に1万7000人、みなし仮設住宅を含めると2万2000人おり、ピーク時の約50%が仮設暮らしから抜け出せない状況です。一方で、約1万4000人が住居を確保したことになり、被災者の二極化か進んでいます。
支援も情報も
在宅被災者の生活は深刻です。簡易的な補修で住み続けている人や、親類のお宅に身を寄せている人など県で約1万5000人いるとされていますが、実態が十分把握できず、支援も情報も届いていない。被災者は一人ひとり状況が違い、それに応じた支援を強めていくことが必要です。
県北と県南でも復興状況に差があります。県北は公営住宅もほぼできており、自立再建も進んでいます。しかし大槌町や山田町や陸前高田市など県南では、半分以上の人たちが仮設に取り残されているという、地域的な二極化が起きています。
災害公営住宅は今年度末までに計画の58%(3334戸)が整備される予定で、来年度までには約88%が整備されます。
一方で、土地のかさ上げによる中心部の区画整理事業は遅れています。宅地造成が遅れているため、自立再建の進ちょくは6割弱。4割以上の人が、家を建てたくても建てられない状況です。商店街の人たちも店を再建できない。ここに復興事業の最も大きな遅れがあります。待ち切れずに、バス路線もない不便な土地に無理に家を建てる人もいます。
販路も漁獲も
生業(なりわい)の再生も重要です。岩手県は基幹産業である水産加工業にグループ補助を優先してあて、8割程度は再建できました。しかし再建まで1年経過していたので、販路が断たれてしまいました。
もうひとつの問題は魚が獲れないことです。この1年、サケもサンマも漁獲量が半分に落ち、価格が高騰しています。再建して新しく導入した水産加工の機械も、例えば釜石市では6割程度しか稼働していません。
従業員不足も深刻です。販路も原材料も人も確保できない三重苦に直面しています。
生業再生のもう一つの焦点は商店街の再生です。被災地では仮設店舗が大きな役割を果たし、多くの商店が再建できました。しかし、5年たち本設展開の時期になってきたのに、土地がまだ造成されていない。さらに資金問題もあります。
テナントで被災した事業者は大家が再建にのりださなくては再建できません。設備以外はグループ補助金の対象にもならない。大家への支援やテナント業者への家賃補助などが必要です。釜石市や陸前高田市などの自治体では具体的な支援の動きが出ていますが、国も県もしっかり対応すべきです。
復興は被災者の生活再建と生業の再生の両面で正念場をむかえています。被災者の孤立やテナント業者の再建など、新しい課題にも機敏に対応できる復興の取り組みが求められています。
(「しんぶん赤旗」2016年2月28日より転載)