日本弁護士連合会は2月25日、学習会「原子力事業者の賠償有限化議論をどうみる」を国会内で開き、40人が参加しました。
昨年5月から内閣府原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会で、原発事故が起きた時の損害賠償制度の見直しが議論されています。焦点の1つが、原子力事業者が無制限の賠償責任を負う現行制度に対し、賠償責任額に上限を設ける「有限責任化」を求める議論がされていることです。
学習会では、専門部会での経過を振り返り、有限責任化によるモラルハザード(責任感・倫理性の欠如)の危険性、その主張の誤りなどが議論されました。
海渡雄一弁護士は、日本で原子力事業者に対する適切な刑事責任や行政上の責任追及がされてこなかったとし、「民事責任を有限責任化すれば、最後のストッパーをはずすことになる」と述べました。
青木秀樹弁護士は、九州電力が川内原発の免震重要棟建設を撤回した例を挙げ、「申請で約束したことさえ守ろうとしないで事業者は利益を追求しようとする」と述べ、有限責任化で事業者が安全性を高める投資に回せるなどという議論は成り立たないと指摘しました。
只野靖弁護士は、有限責任化は「事業者の責任が免責される範囲を大きく拡大することを求めるもの」と指摘。事業者などが有限責任化の理由に挙げる「原子力事業の担い手確保」に対し、「平時に大きなもうけを出しながら、事故時には賠償義務を限定してもらい、自らが生き残りたいというだけ」と批判しました。
大島堅一立命館大学教授は、「福島原発事故が実際に起きた以上、限度額を設けることに正当性はなくなっている」と述べました。
浅岡美恵弁護士は、事故の被害影響を受ける地域住民が当事者として議論しなければならない問題だとして、「国民的議論をすべきだ」と強調しました。
日本共産党の本村伸子衆院議員が参加しました。
(「しんぶん赤旗」2016年2月26日より転載)