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高浜工事計画認可に異議・・市民527人 規制委に申し立て

 再稼働の準備が進められている関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の工事計画認可に関して、蒸気発生器細管の耐震性評価において審査ガイドの規定に反するとして認可の取り消しを求めて、527人の市民が1月25日、行政不服審査法に基づく異議申し立てを原子力規制委員会に行いました。

 規制委の定めたガイドによれば、蒸気発生器などの耐震評価では日本電気協会の耐震設計技術指針の規定を参考にすることなどを求めています。その技術指針では、地盤特性の不確かさなどを考慮して、耐震性の判断することを求めています。異議申立書によれば、高浜3、4号機の審査では、地盤特性の不確かさを考慮した取り扱いを行っていないと指摘。また、関電資料から推定し、従来どおり不確かさを考慮した場合、許容値を上回るとしています。

 また、高浜原発3、4号機の蒸気発生器細管の耐震評価では、関電は従来と異なる解析手法を用いているものの地盤特性の不確かさを考慮しない理由にはならないとしています。

 規制委による工事計画の認可は、3、4号機でそれぞれ昨年8月と10月で、すでに異議申し立ての期限を過ぎています。しかし、工事計画の認可にかかわる審査は非公開で実施されており、申し立てた市民は「認可処分があったことを知った年月日」が処分の下された日よりも遅くなったと主張しています。

(「しんぶん赤旗」2016年1月26日より転載)


 

異議申立書の理由は下記の通り(「伊藤昭一ブログ」より転載)

【異議申立ての趣旨】
  「記載の処分を取り消す。」との決定を求める。
【異議申立ての理由】
 (1)高浜原発3・4号機の安全上重要な機器の一つである蒸気発生器の伝熱管の工事計画認可変更申請(以下「工認」)における基準地震動Ssによる耐震評価結果において、発生値376MPaの算出に際して、「地盤特性・建屋剛性・機器の固有周期等の不確かさ(以下「地盤特性等の不確かさ」)」の影響が考慮されておらず、十分な耐震安全性が確保されず、耐震工認審査ガイドの規定、基準規則第四条第三項及び技術基準規則第五条第二項に違反することから、認可を取り消すべきである。
 (2)工認の審査書には、「耐震重要施設(Sクラスの施設)を、基準地震動による地震力に対して、当該施設の安全機能が損なわれるおそれがない施設とするため、設置変更許可申請書の設計方針に基づくとともに、耐震工認審査ガイドを踏まえ、工事計画認可において実績のあるJEAG4601等の規格及び基準等に基づく手法を適用して、基準地震動による地震力に対して、施設の機能を維持する設計としていることを確認した。」との記載がある。耐震設計技術指針JEAG4601は、機器・配管類の地震応答解析は、スペクトルモーダル解析法を用い、設計用床応答スペクトルを作成する際に、±10%の拡幅を行うことにより、地盤物性等の不確かさの影響を考慮することを要求している。
 (3)工認や適合性審査の過程で関電が提出した補足資料から推定すると、JEAG4601の規定に従い、スペクトルモーダル解析法により、床応答スペクトルの拡幅を実施し、地盤物性等の不確かさを考慮した評価を実施すると、基準地震動Ssによる発生値は460MPaとなり、許容値447MPaを上回る。
 (4)関電は「今回工認手法」として、スペクトルモーダル解析法ではなく、時刻歴応答解析法を採用している。しかし、時刻歴応答解析法を採用したところで、地盤特性等の不確かさを考慮しない根拠にはならない。実際、関電は別に、時刻歴応答解析法において、床応答スペクトルの拡幅に相当する床応答スペクトルのゆらぎの評価を実施している。また、美浜原発3号機の適合性審査会合の場で「この不確かさ(地盤特性等の不確かさのこと)を考慮しなくていいというふうには我々は考えていない」などと述べている。
 (5)関電は補足説明資料において、「手法が有する保守性と不確かさの影響の比較」を行い、「地盤特性等の不確かさ」の影響は、手法が有する保守性よりも小さいことを説明している。しかしこれでは「地盤特性等の不確かさ」を考慮しない理由にはならない。
 (6)また、「床応答スペクトルの拡幅」に相当する「床応答スペクトルのゆらぎ」の評価を実施した場合、発生応力は437MPaとなり、許容値447MPaを下回るとしている。しかしその評価では、手法が有する保守性の一部(解析モデルが有する保守性)を外している。手法が有する保守性をすべて考慮した場合、発生応力は505MPaとなり、許容値を上回る。
 (7)工認の審査書には、「今回の申請範囲において、既往の振動試験等により得られた発生荷重に対して保守的な解析荷重が得られており、この解析手法を用いて得られる地震荷重を入力とする応力評価の結果、設備に生じる応力が許容値を満足することから、蒸気発生器伝熱管の構造強度が維持されること…を確認した」との記載があるが、なぜ今回の申請に限り、解析モデルが有する保守性を外した結果を確認したのか不明である。また、保守性の確保については、美浜原発3号機の蒸気発生器の耐震評価において、関電が時刻歴応答解析法による評価を示し、地盤特性等の不確かさの影響が、手法が有する保守性によりカバーされるとの説明を行ったのに対し、原子力規制委員会側が、保守性はトータルで確保すべき、保守性の考え方から検討し直さなければならない、などと指摘している(2015年11月19日の適合性審査会合他)。指摘を受けた関電は、スペクトルモーダル解析法により、地盤等の不確かさの影響を考慮するやり方に戻そうとしている。
 (8)福井地裁での仮処分異議審の決定には、「債務者(関電)は、評価値の算定過程においては、床応答スペクトルを拡幅することで機器等に作用する荷重を保守的に見積もり…保守的な評価を行い…債務者(関電)が採用した評価値…には合理性があるものといえる」との記載がある。これは関電の主張をそのまま取り入れたものと思われるが、明らかに誤りである。
 (9)美浜3号機の蒸気発生器の耐震評価は、主に公開の適合性審査の場で検討されているが、高浜3・4号機の場合は、すべて非公開の事業者ヒアリングの場で検討されており、資料も白抜きが多いことから、具体的にどのような検討・議論がなされたのか、不明な部分が多い。美浜3号機の審査についても、例えば、「拡幅」に相当する「ゆらぎ」の評価については、全くわからない状況である。