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福井 高浜原発再稼働に道理なし・・避難計画ずさん・県民説明会なし・近隣自治体「反対」

16-1-25zu 新規制基準への適合性審査に合格(昨年2月)とされ、再稼働の地元同意(同12月)をとりつけた関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が1月の下旬以降に順次再起動されようとしています。しかし、基準や審査、事故時の住民避難計画は問題だらけ。福井県民への説明会も開かれないままです。隣接する京都、滋賀両府県も再稼働に理解を示しておらず、こんな状況で、どうして再稼働できるのか。再稼働に前のめりの国と福井県、関電の住民無視の姿勢が際立っています。

(福井県・山内巧)

 高浜3、4号機の再稼働を推進する動きは昨年11月下旬以降、一気に強行されました。(別項参照)

 しかし、再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査は正当性を疑われており、昨年4月の高浜3、4号機差し止め仮処分決定(福井地裁)も新規制基準に対し、「合理性を欠く」と断じました。

国会でも追及

 国会では、日本共産党の藤野保史衆院議員が、東京電力福島第1原発事故の国会事故調査委員会報告書で指摘された、原発の集中立地に潜在する同時多発事故の危険性を追及しました。まさに15基の原子炉が集中立地する福井県にあてはまるこの問題で、田中俊一・原子力規制委員長は「新しい炉をつくるときには十分に考慮されるべきかもしれない」などと答え、既設炉は不問に付しました。

 再稼働の是非をめぐる福井県民への説明責任、意見聴取も果たされていません。西川一誠知事は国と高浜町任せで、高浜町も住民説明会を開いていません。規制委が作成した約30分のビデオを放映する程度でした。県内外から寄せられた30万人分の「もう動かすな原発!福井県民署名」への対応でも西川知事自身は面会しませんでした。

 高浜3、4号機の「安全性」にお墨付きを与えた県原子力安全専門委員会も、県民への説明には事実上応じない態度です。

 西川知事は「県内の理解は他の(県外の)地域より進んでいる」と強弁しましたが、NHKの10月の世論調査では、敦賀市、美浜町の嶺南2市町と福井市などの嶺北11市町の回答者の52%が再稼働に「反対」です。若狭町では12月議会で、町民説明会開催を求める請願を全会一致で可決しています。

 関電が原発再稼働の同意を得る地元を、福井県と高浜町に限定しているのも、福島原発事故の教訓を学んでいません。大事故が起きれば、影響は県境に関係なく、広範囲に及びます。しかも、防災対策が義務付けられた30キロ圏には京都、滋賀両府県が入り、約18万人が暮らしており、ただちに避難が必要な5キロ圏内に京都府舞鶴市が含まれています。

問題は山積み

 地元同意の手続きで「京都府が除かれており遺憾だ」としてきた山田啓二府知事は西川知事の再稼働同意にはコメントせず、滋賀県の三日月大造知事は「実効性ある多重防護体制が整えられていない以上、再稼働を容認できる環境にない」と反発しています。

 県境を越える広域避難計画は了承されたとしていますが、住民参加の訓練は実施されていません。

 しかし、原発から5キロ(高浜町は6キロ)〜30キロ圏の住民の避難は、すでに放射性物質がかなり飛来した後に即時避難と、甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤の配布となり、安定ヨウ素剤の配布場所や、被ばくの検査・除染場所の渋滞を助長することなど、問題は山積みです。

 こうした状況に対し、年末には、30キロ圏内の人口が約2万人いる京都府宮津市の市議会で、「実効性ある避難計画」が策定されていないとして、再稼働に反対する意見書を可決。原発から80キロ南にあり、計画で避難先となっている京都府京田辺市の市議会も、問題が解決されないままの避難計画の下での再稼働は「大混乱をもたらす」と、再稼働反対の意見書を可決しています。

高浜原発めぐる昨年11月下旬以降の動き

11月25日 関電が高浜原発の再稼働時期を、3号機は1月下旬、4号機は2月下旬とすると発表。

12月3日 野瀬豊高浜町長が再稼働に同意。

  16日 地域原子力防災協議会で福井、京都、滋賀3府県が広域避難計画を了承。

  17日 福井県議会で再稼働同意決議。

  18日 安倍首相は原子力防災会議で、原発の再稼働や原子力防災対策、廃炉、使用済み燃料対策、立地地域の振興などの課題に「政府としてこれらに責任をもって取り組む」と発言。

  20日 林幹雄経済産業相が県庁を訪れ、西川一誠知事に同意を要請。

  22日 西川知事が同意。

  24日 福井地裁が昨年4月の高浜原発運転差し止め仮処分決定を取り消し

 

環境汚染対策不十分・・山本富士夫・福井大学名誉教授の話

fujio-y 高浜原発3、4号機は、新規制基準に適合したというものの、田中俊一・原子力規制委員長さえ「安全とはいわない」と説明を繰り返す通り、基準自体が「ゆるやかすぎ」る問題をかかえています。国際基準で求められる環境汚染や避難の対策は極めて不十分なままです。

 高浜原発の両辺は断層調査が不十分な地帯だという地質学の専門家の指摘もあるし、設備の老朽化の問題もあります。

 県内外から集まった「もう動かすな原発!福井県民署名」に対し、西川一誠知事は、署名を受け取る場にも現れず、無視しました。まったく説明責任を果たさず、再稼働への同意手続きは、お膳立てがあったかのように、国の姿勢に沿って、どんどん進められました。知事も国と同じように、県民の命を守る立場に立っているとは思えません。

 

人の命を軽く見ている・・「子どもの未来を考える舞鶴ママの会」の添田光子さん(35)=京都府舞鶴市、農業=の話

kyouda-m 福島原発事故のことがまだ解決していません。仮設住宅などで避難生活を強いられている多くの人たちがいて、事故による傷が癒えておらず、原発に対する不安がある中で、再稼働はおかしいです。再稼働を進める国も住民を切り捨て、人の命を軽く見ていることがわかり、とても悲しく思います。

 高浜原発の場合、事故想定で放射能の広がりを福島原発事故より少なく見積もっています。事故の教訓を考えるなら、むしろ慎重になるべきです。

 また、現実味のない避難計画のままの再稼働はとても不安です。私が住む場所は台風で土砂崩れが起き、雪が降れば積雪は160〜180センチになるのに、計画でそれが想定されていません。本当に原発は必要なのか、真剣にみんなが対話し、子どもたちの未来のためにどうすべきか考えなければなりません。

(「しんぶん赤旗」2016年1月25日より転載)