地球温暖化の進行で水資源の温度や量が変化した場合、将来的に電力供給が著しく低下しかねないとの研究が、科学誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ』(1月4日付)に発表されました。
オーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)による研究。世界中の2万4000以上の水力発電所と約1500の火力発電所のデータを分析しました。
世界の発電量の約98%を占める水力発電と火力発電は、水を必要としています。そのため温暖化によって、水温が変化したり、真水の利用可能性に変化が生じたりすれば、2040〜69年の間に世界の3分の2以上の発電所で発電能力が減る可能性があると、この研究は指摘しています。
水力発電はタービンを動かすために水が必要で、また、火力発電には、システムを冷却するために真水が欠かせません。
論文の執筆者の一人である、IIASAエネルギー計画部のケイワン・リアヒ主任はロイター通信に対し、「発電所は温暖化を引き起こしているだけでなく、気候に大きく左右される」と語りました。
特に問題なのは、夏と電力消費が多くなる時期で、リアヒ氏によると、これらの期間は、高水温の時期とも重なるため、発電所を冷却するのがさらに難しくなるといいます。
研究は、各国や電力会社は発電能力の低下に対応するため、発電所の効率を高める必要があると指摘。リアヒ氏は、電力会社は温暖化の影響を軽減するために、真水を使った冷却システムから空気冷却システムヘの転換など、新しい技術に投資するよう訴えました。
(呉紗穂)
(「しんぶん赤旗」2016年1月7日より転載)