日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 三大都市圏・沿岸部の高層ビル 最大で6メートルにも・・長周期の揺れ 南海トラフ地震で想定

三大都市圏・沿岸部の高層ビル 最大で6メートルにも・・長周期の揺れ 南海トラフ地震で想定

 静岡沖から九州東方沖にかけての南海トラフで巨大地震が起きた場合、超高層ビルの上層階が揺れ幅の大きい「長周期地震動」でどれくらい揺れるかを内閣府の検討会が推定し、報告書を12月17日公表しました。大阪と名古屋、東京の三大都市圏の地盤が軟らかい沿岸部で揺れが大きく、長く続くとみられます。

 ビルが倒壊する危険性は低いものの、転倒による負傷やエレベーターの閉じ込め、天井材の落下などが予想されます。震源近くでは津波や木造家屋の倒壊、火災が同時発生する可能性が高く、検討会はビル管理会社や入居者に対し、救急・消防隊が来られないことを前提に対策を講じるよう求めました。

 検討会は、1707年の宝永地震(マグニチュード=M8・6)から1946年の昭和南海地震(M8・0)まで五つの大地震が再び起きた場合と、紀伊半島沖を震源とするM9級の「最大クラスの地震」を想定。高さ60メートルを超える超高層ビルが周期2〜10秒の長周期地震動によって揺れる程度を推定しました。

 高さ200〜300メートルのビルが大阪市住之江区の埋め立て地にあった場合、最大クラスの地震で発生した周期5秒の地震動による最上階の揺れ幅は、最大約6メートルに達しました。名古屋市中村区にあった場合は約2メートル、東京23区の場合は約2〜3メートルと推定されました。この高さは約240メートルの東京都庁舎や約300メートルの大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」に相当します。

 zu15-12-17

ビル事業者の対策義務化へ・・国土交通告

 南海トラフ巨大地震による長周期地震動の推定が出たことを受け、国土交通省は新たに超高層ビルを建てる事業者に対し、同震動を踏まえた設計にするよう義務付ける方針です。既存の建物にも自主的な検査を要請し、改修が必要な場合は補助する意向。揺れが大きくなりそうなビルには「ダンパー」と呼ばれる制震装置を設置するなどの対策が求められるとみられます。

 建築基準法では、高さ60メートルを超える超高層ビルを設計する場合、複数の地震波データを考慮した複雑な構造計算を課しています。

 国交省は大臣認定の運用を見直し、内閣府が出した長周期地震動のデータを計算に加えるよう設計者に求めます。より長く、大きな揺れを織り込んだ設計が要求されます。

 超高層ビルは全国に約3000棟あり、大半が東京、大阪、名古屋に集中。55階建てで高さ256メートルの大阪府咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)は東日本大震災時、震源地から約700キロ離れていたにもかかわらず10分程度揺れ、エレベーターの閉じ込めが起きました。

(「しんぶん赤旗」2015年12月18日より転載)