
台湾は5月17日に第3原発2号機が40年の稼働期限を迎えて運用停止し、アジアで初めて脱原発を実現しました。40年以上続く反原発運動を基礎に、2011年3月の東京電力福島第1原発事故を契機に原発反対の運動が盛り上がり、政治を動かした成果です。今後は、核廃棄物の処理、再生可能エネルギーの発展をどう進めるのかなどが課題となります。(台北=小林拓也)
5月17日午後10時、台湾の原発の発電量がゼロになると、台北市内の台湾電力ビル前に集まった市民らが「ノー・ニュークス・台湾、ノー・ニュークス・アジア」と叫び、脱原発の達成を喜びました。台湾メディアによると、台湾南部・屏東県の第3原発の敷地内には太陽光パネルが敷き詰められ、南部の恒春半島最大の太陽光発電所になる予定です。すでに設置作業が進んでおり、来年3月に完成し、1万5000世帯に電力を供給できるようになるといいます。
台湾はAI産業や半導体産業などが発展し、電力需要が高まっており、住民からは原発ゼロで電力不足になるのではという懸念も出ています。台湾政府は、発電能力は需要に対して10%以上の余裕があり、すぐに電力不足になることはないと表明しました。
気候変動対策も
台湾の発電量に占める原発の割合は10年には約2割でしたが、24年には約4%まで減りました。一方で、火力発電が8割を占め、気候変動対策を進める上で大きな挑戦となっています。
ここ数年で急成長している再生可能エネルギーの割合は、24年に初めて1割を超え、11・9%となりました。台湾政府は25年末までに再生可能エネルギーの割合を20%にするとしていましたが、電力需要の増加や施設建設の遅れなどで目標達成は難しくなり、26年末までの達成に切り替えました。さらに、気候変動対策として、50年までに再生可能エネルギーの割合を60~70%にし、脱炭素を実現するという長期目標を立てています。
台湾の再生可能エネルギー発電量のうち太陽光発電が5割近くを占め、大きく発展しています。さらに、洋上風力発電を大規模に推進する計画です。洋上風力発電施設が次々と商業運転を開始しており、21年は237メガワットだった発電量は、26年には5・6ギガワット(1ギガワットは1000メガワット)、35年は20・6ギガワットに達する見込みです。
環境団体「緑色公民行動連盟」の崔ソ欣(さい・そきん)事務局長は「今後2~3年が重要だ。電力供給に問題が起きず、原発がなくても大きな影響はないと台湾の民衆が感じられれば、原発回帰の声は減っていくだろう」と語ります。
再稼働狙う野党
原発から出る核廃棄物の処理も大きな問題です。最終的な処分場は決まっておらず、議論が始まったばかり。しばらくは廃炉となった原発内に貯蔵されることになります。
国民党など野党は原発再稼働を狙い、野党が過半数を占める立法院で5月13日、事業者の申請により原発の稼働期間を60年に延長できるとする法案を可決しました。さらに立法院は同20日、第3原発の再稼働を問う住民投票案を可決。8月23日に住民投票が実施される予定です。崔事務局長は「再稼働反対が多数となるよう運動していく。脱原発の最後の闘いに勝利し、真の原発ゼロを実現したい」と決意を述べました。
(「しんぶん赤旗」2025年6月13日より転載)