来年2016年4月から、家庭向けの電力自由化が始まります。私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。くらしの相談室「マンション・住宅」回答者の渡辺政利さんに聞きました。
Q 消費者が電力会社を自由に選択できるようになると聞きました。どんなしくみなのか詳しく教えてください。
A 日本では全国を10の地域に分け、電力事業は地域の大手電力会社に独占されてきました。たとえば首都圏に住む人は、東京電力1社としか契約ができませんでした。来年4月からは一般家庭で電力会社を自由に選べるようになります。
2000年から始まった電気小売りの自由化で「新電力」と呼ばれる電力小売事業者が参入し、すでにビルや工場などでは電力自由化が進められてきました。「新電力」は再生可能エネルギーによる発電や、工場などの自家発電余剰分などを集めて供給源としますが、電力が不足する場合は地域電力会社の応援を得て電力供給を安定させます。
Q 電力自由化はどのように進められますか。
A 電気供給は技術的に、送電量と使用量が一致しないと電圧が不安定になり、設備が破損することがあります。一定地域に電力供給を行う企業を1社に定めることでこのバランスを保ちやすくしていたのです。
しかしコンピューターと情報通信技術の発達で電気の使用量を30分ごとに把握し、データをリアルタイムで送信できるスマートメーターが開発されました。これを発・送電会社に結びつけて電力供給量をコントロールします。電力会社との契約を自由に変更する電力自由化ではスマートメーターが必要で、一般家庭でも順次無料(ただし電気代込み)でメーターの取り替えが行われます。
今後、料金メニューの多様化、使用量の多い時間帯が分かれば効果的な省エネも期待できます。
Q 小売事業者は何社ぐらいありますか。
A 自由化市場に参入し、登録を受けているのは12月7日現在で73社です
(資源エネルギー庁ホームページ)。消費者に対し、料金や供給条件を事前に説明し書面を交付する義務があります。
ガス会社や石油会社などの異業種が、ガスやガソリンと電気の割引販売を検討していますが、電気料金が安くなるかはふたを開けてみないと分かりません。慎重に判断した方がよいでしょう。
太陽光・風力・波力・地熱・バイオマス・小規模水力などの再生可能エネルギーによる小規模発電を行う会社との契約も可能になります。
しかしどんな電力を販売しているかの表示(再生可能エネ0%、原子力0%、火力0%など)は大手電力会社の意向を優先し、小売会社に法的な義務づけをしない方向での議論が進められています。消費者が「選択」できにくくなり問題です。表示のあり方の検討が求められています。
ポイント
・何も手続きをしなければ、現在契約している電力会社から引き続き電気の供給を受けられる。
・マンション全体で一括受電をしている場合、各戸ごとの契約は自由に変えられない。管理組合で相談しよう。
渡辺政利さん
1級建築士・1級建築士事務所くらしの環境改善
(第2土曜掲載)
(「しんぶん赤旗」2015年12月12日より転載)