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もんじゅ設置許可取り消し求め、規制委を提訴へ・・福井、京都などの住民

もんじゅ2次提訴について、会見を行う、原告側弁護士と原告予定者のみなさん(2015年12月8日、福井市内、撮影=山本雅彦)
もんじゅ2次提訴について、会見を行う、原告側弁護士と原告予定者のみなさん(2015年12月8日、福井市内、撮影=山本雅彦)

 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、原発反対県民会議らの、原発に反対している福井県、京都府らの住民が、原子力規制委員会が設置許可を取り消すよう求めて、年内もしくは年明け早々に東京地裁に提訴すると発表しました。

 12月8日、福井市で行われた記者会見で、原告側の甫守一樹(ほもり)弁護士は、規制委が先月、原子力機構は「もんじゅ」を扱う上で失格だとし、運営主体を変更するよう文部科学省に勧告したことを受けて、本来、設置許可をするときには、「運転をする技術的能力があること」とされており、これがないと許可することができないと述べた上で、「当時は、運転管理能力がないということが、分からなかったとしても、今となっては規制委自らが、ほとんど技術的能力がないことを明言している」と強調しました。

 さらに、「止まっているとはいえ、一定のリスクがあると田中規制委員長が明言しているので、規制委には設置許可を取り消す義務があるのではないか、と考えて『設置許可処分取消義務付』を検討している」と提訴に踏み切った理由を説明しました。

 同会見で、原告予定の中嶌哲演・明通寺住職は、「もんじゅ」運転反対の運動を振り返って、1982年の「もんじゅ反対 大集会」で「青い海残して、若狭も都会も共存共栄」、「『もんじゅ』建設は、核武装への道」、「原発を拒否することこそ、「もんじゅ」の真の知恵ではないか」と述べたことを紹介し、生きとし生けるものを滅ぼしていく「もんじゅ」を廃炉にすることが我々の思いであり、全国民の意思であると話しました。

 「もんじゅ」を巡っては、地元住民らが1985年に設置許可の無効確認を求め福井地裁に提訴し、2003年に名古屋高裁金沢支部判決で勝訴しましたが、05年の最高裁判決で敗訴しています。

新もんじゅ訴訟 訴状(案)は、こちらをご覧下さい。

 

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 高速増殖炉「もんじゅ」は、一般の原子炉がウランを燃料に使うのに対し、「もんじゅ」ではプルトニウムを燃料に使います。「もんじゅ」炉内の高速中性子が、同炉内に配置した燃えない(核分裂しない)ウラン238に当たると、プルトニウム239に変わることから、核燃料を増殖する「夢の原子炉」と言われてきました。

 しかし、その技術は困難な点が多くあり、1995年には初送電開始からわずか4カ月後に、ナトリウム漏れ・火災事故を起こし停止しました。

 「もんじゅ」はその後、運営主体を改組して2010年にいったん運転を再開しましたが、3カ月後に燃料交換装置の炉内落下事故を起こし、再び停止しました。

 その後も、多数の点検漏れなど不祥事が繰り返されたため、規制委が先月、「運転を安全に行う必要な資質がない」として、運営主体を原子力機構から交代させるよう、所管する文部科学省に勧告していました。

(2015年12月8日、山本雅彦)


 

もんじゅ新訴について

平成27年12月8日

新もんじゅ訴訟弁護団  弁護士 甫守(ほもり)一樹

 高適増殖炉もんじゅについて、原子力規制委員会は平成27年11月13日、文部科学大臣に対し、「半年を目途として、現在の日本原子力研究開発機構から運営主体に切り替えよ。それが不可能ならば安全上のリスクを明確に減少させるよう抜本的に見直せ。」という勧告を行いました。勧告文書の中では、ナトリウム漏洩事故や9000以上の機器の点検漏れなど過去の事実が踏まえられた上で、「機構という組織自体がもんじゅに係る保安上の措置を適正かつ確実に行う能力を有していない」「早急に適切な措置が必要」等の認定がなされました。田中俊一原子力規制委員会委員長は同日の記者会見において、「看板の掛け替えは許さない」という厳しい態度で今後の対応に当たることを明言しました。

 今回の規制委員会の勧告に対し、遅きに失したと批判することも出来るかもしれません。しかし「事業者の虜」だった旧組織時代のことを思えば、格段に安全性を考慮したものであることは誰も否定できないと思います。今回の規制委員会の勧告については、国民の生命、身体等の保護及び環境の保全という本来の任務に沿うものとして評価し、原子力規制委員会の委員長・委員並びに原子力規制庁の担当職員の方々に対して敬意を表したいと思います。

 一部では、この勧告を受けてもんじゅはもう廃炉にするしかないとも予想されているようです。しかし、私共はそのように安心しておりません。

 「原子カムラ」の従来からの強かさからすると「替わりの受け皿組織を作り、トップは入れ替えるものの実際的な運営者は機構のまま」といった「ズル」をすることや、「適当に対策を講じただけで、『リスクは明確に減少させ、抜本的に見直した』と喧伝する」といった「強弁」をすると考えます。

 このような「ズル」や「強弁」を許さず、将来にわたって放射能の恐怖に怯える必要のない社会を実現するためには、今きちんともんじゅに引導を渡す必要があります。そのためには、「『ズル』や『強弁』は許さない」という強い姿勢を社会に向けて発信して原子力規制委員会を支え、かつ勧告の趣旨を簡単に翻すことのないよう規制委員会を厳しく監視し、適やかに廃炉措置へ移行するよう導いていかなくてはなりません。

 今般、新たにもんじゅ訴訟を提起することが、そのために有効かつ必要な手段だと考えるに至りました。

 また、旧もんじゅ訴訟における平成17年5月30日の最高裁判決は、法律審としての枠を大きく踏み越えて過度に行政寄りの判断をした、司法史に残る汚点です。裁判所に対しては、福島第一原発事故の経験を踏まえ、この汚名を雪ぐ適正妥当な裁判を行うことを強く期待しております。