2020年以降の地球温暖化対策について議論する国際会議(COP21)が、11月30日からパリで始まりました。交渉の行方に世界が注目するなか、日本の石炭政策に厳しい視線が注がれています。
日本では現在48基の石炭火力発電の新設が計画されており、すべて稼働すると年間1・4億トンの温室効果ガスの排出増になります。日本が掲げる30年までの排出削減量約3億トンの2分の1に匹敵します。
温室効果ガスを大量に排出する石炭火発の規制に欧米が踏み切るなか、日本は海外にも石炭火発の輸出を進めています。背景には石炭火発を安いと誤誘導する政府のエネルギー政策があります。
安倍晋三政権は、石炭火発を原発に次いで発電費用が安い電源と位置づけています。石油と違って世界各地で採れる石炭は、供給も安定している″優良投資物件″だというわけです。
石炭火発の発電費用が安いのは、計算式のなかに環境への影響が入っていないからです。地球温暖化が社会に与える巨大な影響を考慮に入れれば、石炭火発の費用は跳ね上がります。今後、国際的な規制が強まっていけば、想定した稼働年数を待たずに廃炉を迫られる可能性は十分にあります。
再生可能エネルギーの普及が進んだ欧州では、再生エネが原発の発電費用すら下回るようになり、原発や火力発電が不良債権化しつつあります。原発と石炭火発は出力調整が難しく、出力が変動する再生エネとの相性が悪いため、再生エネ導入の障害にもなります。
政権とともに原発推進にのめりこみ窮地に陥った東芝問題の教訓は、目先の利益で投資に走れば、人類の将来だけでなく企業の経営も危うくするということ。石炭火発も同じです。
(佐久間亮)
(「しんぶん赤旗」2015年12月1日より転載)
経産省部会 核燃事業延命狙う・・国関与の新法人設立案示す
破綻が明白になっている核燃料サイクル事業を維持・推進するため原発の使用済み核燃料の再処理事業のあり方を検討していた経済産業省の作業部会が11月30日開かれ、国が関与を強める認可法人を設立するなどの「中間報告」案を示しました。年内に一般からの意見を募集する予定です。
案では、再処理事業を担う現行の日本原燃(青森県六ケ所村、電力会社が出資する株式会社)に対し、事業を委託する新しい認可法人を設立します。認可法人は国の許可がなければ解散できません。
また、事業に必要な資金については、電力会社が積み立て、必要に応じ積立金を取り崩して日本原燃に支払う現行方式から、必要な費用を新法人に拠出することを電力会社に義務づける制度に変更するとしています。来年春の電力自由化後も資金を確保するなど再処理事業の延命をねらっています。
案では、新法人内に、外部有識者を構成員とする委員会を設置し、拠出金額などの決定に関与する仕組みもつくるなどとしています。
委員からは、中間報告案に対し、「新法人と日本原燃との間で責任の所在があいまいになりかねない」などの意見がありました。
核燃料サイクル事業は、原発の使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムとウランを取り出して再び燃料に使うというもの。しかし、国が事業の柱と位置づける日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は相次ぐ事故やトラブルで運転のめどが立たず、運営主体の交代を原子力規制委員会に勧告されるありさまです。日本原燃の再処理工場も未確立の技術で事故やトラブルが相次ぐなど完成時期を23回延期。核燃料サイクルは完全に行き詰まっています。
(「しんぶん赤旗」2015年12月1日より転載)