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近づくCOP21 なにをめざすか・・水没・干ばつ・生態系破壊 迫る温暖化の危機/「2度未満」へ問われる世界と日本

WWF(世界自然保護基金)ジャパン 山岸尚之さん

WWF(世界自然保護基金)ジャパン 山岸尚之さん
WWF(世界自然保護基金)ジャパン 山岸尚之さん

 11月30日から12月11日(予定)まで仏パリ郊外ル・ブルジエで開催されるCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締結国会議)。 196の国・地域がなにを議論し、なにを目指すのか、WWF(世界自然保護基金)ジャパンの気候変動・エネルギーグループリーダーの山岸尚之さんに聞きました。

(聞き手 野村説)

 温暖化問題の難しいところは気象災害の事象の一つひとつをとって、これが気候変動に起因するものですと、なかなか断言できないという点にあります。しかし、桜の開花時期が入学式に合わなくなってきたり、南方の蚊が北上することによって引き起こされるデング熱などの感染症の拡大、熱射病や熱中症にかかる人たちが増加傾向にあることなど、日本人にとっても温暖化は身に迫っているのです。

 生物は温暖化から逃れるために、高緯度か高標高に移動することを余儀なくされます。日本アルプスに生意する特別天然記念物のライチョウは温暖化によって特に絶滅が危惧されていますが、高山帯にすむライチョウが低い標高から上がってきたキツネなどに襲われるというような生物多様性に関わる問題も表面化してきます。

 世界では、温暖化に対してぜい弱な南太平洋の島国から、オーストラリアやニュージーランドに移住を計画する環境難民の人たちがいます。アフリカでは干ばつに起因する飢餓で多くの子どもが死んでいます。中東シリアから地中海を渡って欧州に向かう難民らも、政治的な背景に加えて干ばつによる食料不足の影響が大きいと考えられています。

 ネパールやインドではヒマラヤの山岳氷河の水資源に頼って生きている人たちがいます。温暖化がすすめば冬季に氷河が再形成されずに将来的には水不足に悩むでしょう。

 海中では、海の熱帯雨林と呼ばれるサンゴ礁が温暖化で白化し、そこに依拠する生態系が壊滅的打撃を受けます。海の豊かさが失われ、ひいては陸の豊かさも失われます。

削減目標を持つ

 COP21では、1997年のCOP3で採択した京都議定書に続く2020年以降の温暖化対策の枠組みづくりを目指します。京都議定書では、先進国だけに二酸化炭素など温室効果ガスの排出量削減の数値目標を課しましたが、今回はすべての国が何らかの形で削減目標を持つことになると思われます。

 気温上昇を産業革命以前(1850年頃)から「2度未満」に抑えることは国際的合意になっていますが、すでに同時期から0・85度上昇しており、現在各国が表明している削減目標をすべて合わせても「2度未満」達成には不十分です。

 各国が長期目標とともに5年ごとくらいで目標数値を見直し、削減量を積み上げる仕組みができるかどうかも注目されます。

 交渉の一番の難点は、先進国と途上国の取り組みに差をもうける「差異化」です。歴史的に大量の二酸化炭素を排出してきた先進国の責任をあいまいにはできませんが、一方で中国やインドなど、これまで数値的な責務を負ってこなかった新興国の対応も問われます。温暖化の被害に直面する途上国に対して資金・技術提供しながら、自国の対策も強化する姿勢を見せることが先進国に求められています。

見掛けの数合わせ

 欧米では、化石燃料産業や石炭火力発電から公的資金や投融資が引き揚げられつつあるなど、もうこの分野にビジネスチャンスはないとの雰囲気が漂っています。

 他方、日本はいまだ国内に40カ所近くの石炭火力発電所の建設計画を持ち、東南アジアヘの売り込みにも積極的です。日本のエネルギー政策は、オーストラリアと並んで世界の潮流からは孤立状態にあります。

 安倍政権はCOP21に向けて「2030年までに26%削減(2013年比)の目頭を打ち出しましたが、90年比では18%滅で、基準年を恣意的にずらすなど見掛けの数合わせで粉飾されています。

 「2度未満」達成を危うくする誠意のない態度だと言わざるをえません。

zu15-11-19 日本の数値目標が前提にしている電源構成「エネルギーミックス」(グラフ参照)では2030年に「原発比率20〜22%」とされ、再稼働や新設、通常40年の稼働期間をさらに延長することも想定しています。加えて、二酸化炭素を最も大量に発生させる石炭電力を2010年と同水準で使い続け、再生可能エネルギーの割合を抑えています。

 日本は年間で約20兆円の化石燃料を輸入していますが、再生エネの最大の利点は言うまでもなく燃料代が不要だということです。風力発電だけでも、日本のエネルギー需要を補ってお釣りがくるくらいの恵まれた条件が日本にはあるのです。

 COP21には、約1万人の各国政府代表のほか、世界から集まる数千人の環境NGO(非政府組織)の活動家が集結し、会場の内外で各国政府への働き掛けや、大規模なデモを予定しています。私たちも歴史的な成果を上げられるよう力を尽くしますので、皆さんもどうか地球環境への関心を持ち続けていただきたいと思います。

(「しんぶん赤旗」2015年11月19日より転載)