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“福島に生きる”音楽を被災者の力に・・琴古流尺八奏者 橘梁盟さん(57)

ikiru15-11-1 福島県伊達市梁川(やながわ)町に住む橘梁盟(たちばな・りょうめい〕さん(57)は、尺八の流派のひとつ、琴古(きんこ)流を17歳のときから習いました。

 父親の民謡教室に通っていた知人から「尺八吹いてみ」とすすめられ、吹いてみると、「筋がいい」とほめられたことからでした。

 橘さんは、歌声サークル、演劇など文化活動や青年団の活動に参加するなかで「尺八を追求してみよう」と、12年間にわたって東京まで通い、東京芸術大学尺八科の初代教授に就任した人間国宝の故山口五郎氏に師事しました。

■シンプルで深い

 「梁盟」は、免状を取得するともらえる尺八奏者の竹号(ちくごう)です。本名は橘三郎です。

 琴古流は、尺八の流派の中で文献上証明できる最も古い流派といわれ、流祖の初代黒沢琴古(1710〜1771)の名前に由来。幽玄で深遠なる響きを持っています。近代、現代になって三箏、弦、尺八の三曲合奏や、他系統の古典本曲を取りいれ、さらに洋楽とのコラボレーションなど各方面に新しいチャレンジが試みられて進化しています。

 尺八は「シンプルだが奥が深い」と言います。

 橘さんが開いている尺八教室には、アメリカ人やニュージーランド人など外国人もいます。福島市で長年英語講師として働く中国系カナダ人のオットーさんも習いにきました。オットーさんは、東日本大震災のときには山形県米沢市に避難しました。生徒が被災し、教室は3カ月休むことになりました。

■自分らしい支援

 梁川町にも避難者が着の身着のままに避難してきました。全国から届いた支援物資を避難所に届ける活動を開始。その後2週間ほどして「自分らしい支援は何か」と考えて、避難所を訪ねて尺八の演奏をしました。

 「聞いてくれた被災者の心が和みました。尺八をやっていて良かったと感じました」

 大震災後に津軽三味線奏者の紺野茂美さんらと和風バンド「線屋」を結成しました。これまで50回以上避難者のために演奏活動をしてきました。

 生業(なりわい)訴訟弁護団共同代表の安田純治弁護士も橘さんの尺八の弟子です。「原発に40年前から反対してきた」ことを安田弁護士から教えられました。橘さんが原告団に加わったきっかけは安田弁護士との出会いでした。

 橘さんは言います。

 「命の次に大切なものは古里です。原発事故はコミュニティーを破壊しました。地域の文化、伝統芸能などすべてが奪われます。理不尽で、分断されていくことにいたたまれない思いです。芸術活動をやっていく上で原発は廃止しかないです」

(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2015年11月1日より転載)