馬奈木巌太郎(まなぎ・いずたろう)弁護士 国と東電の反対尋問ですが、対策を怠っていたことが次々証言されているのに、些末(さまつ)な重箱の隅をつつくような質問しかできませんでした。
国と東電の暴論
再稼働を進める安倍政権のもとで、原発を扱っていることの重大性について自覚が無く、当事者として無反省と言わざるを得ません。いかに安全性を確保することを怠っていたのかがいよいよ明らかになってきました。
──今後の課題はどんなことでしょうか?
馬奈木 専門家の証言は、原告団に強力な追い風となりました。次回から原告本人の尋問に入ります。被害について、生々しい実体験に基づいて証言します。また、被害をよりリアルに把握するためにも、裁判所に被害現地の状況を直接見て実感してもらうことが不可欠で、検証という手続きを実施するよう求めています。
国と東電は法廷で「年間の被ばく線量が20ミリシーベルト以下は何らの被害にあたらない」という暴論を主張しています。
受忍の押しつけ
この主張は、原子力規制委員会が示した、追加の被ばく基準の1ミリシーベルトよりも20倍も高い数値です。
こんなことが容認されれば、再稼働が進められるなか、福島だけでなく全国に大きな影響を与えることになります。避難地域の解除基準の1つとして、「20ミリシーベルト以下」があるわけですが、この数値が、解除の基準のみならず、被害の有無の基準にもなっています。
「20ミリシーベルト以下は我慢せよ、被害とはみなさない」という受忍の押しつけを許さないたたかいが緊急の課題に浮かび上がっています。
(おわり)
(「しんぶん赤旗」2015年10月26日より転載)