東京電力福島第1原発の事故対応に従事した後、白血病を発症した元作業員の40代男性について、富岡労働基準監督署(福島県いわき市)は10月20日、「被ばく
と疾病の因果関係が否定できない」として労災と認定しました。福島第1の事故後の作業で、白血病を含むがんが労災認定されたのは初めてです。
厚生労働省によると、男性は2012年10月〜13年12月、福島第1原発で原子炉建屋の覆いを設置する工事などに従事。同原発での被ばく線量は15・7ミリシーベルトでした。男性は他にも複数の原発で働き、累積被ばく線量は約1年半で19・8ミリシーベルトに上るといいます。体調不良から医療機関を訪れたところ、白血病と診断されたため労災申請していました。
国は1971年、放射線被ばくによる白血病の労災認定について基準を策定。被ばく線量が年5ミリシーベルトを超え、作業開始から1年以上が経過して発症した場合、ウイルス感染など他の原因がなければ認定するとしました。
福島第1原発の事故前には、各地の原発で勤務した作業員13人が白血病を含む「がん」で労災認定されています。福島第1の事故対応では8件の申請があり、うち3件の不支給が決定。取り下げられた1件を除く4件が調査中でした。
労災申請増加の可能性
東京電力福島第1原発では現在、1日平均7000人弱が作業員として働いています。白血病の認定基準となる年5ミリシーベルトを超える被ばくをした作業員は2014年度に約6600人に上っており、増加傾向にあります。事故対応は長期化が見込まれ、労災申請者がさらに増える可能性もあります。
東電が公表している資料によると、年5ミリシーベルト超の被ばくをした作業員は13年度は約4900人、12年度は約5000人でした。作業員の数が増えていることに加え、建屋周辺での除染やがれき撤去など、被ばく量の大きい仕事が増加していることが背景にあるといいます。
過去には、稼働中の原発での作業後にがんを発症し、労災認定された例もあります。九州電力川内原発(鹿児島県)が再稼働し、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)などでも運転に向けた手続きが進んでおり、再稼働後の原発は停止時と比べ、点検作業などによる被ばく線量が増えることになります。
(「しんぶん赤旗」2015年10月21日より転載)