政府が国民に節電への協力を呼びかけたこの夏の電力需給対策が9月末で終わりました。全国的なピーク時(8月7日)でも電力需要に対する電力会社の供給力の余裕(予備率)は約12%と予想を大幅に上回り、電力不足どころか、大幅に余裕を持って夏を乗り切ったことになりました。東京電力福島原発の事故後全国の原発が停止し、この夏も九州電力川内原発1号機が8月半ばに運転を再開した以外は全国の原発が停止していましたが、電力は賄えたのです。原発を再稼働させる根拠がないのは明らかであり、原発は停止したまま「ゼロ」へ進むべきです。
全国の原発が停止中でも
夏は冬とともに電力需要が増える時期で、東京電力福島原発事故で各地の原発が停止して以降、政府は夏と冬に節電を呼びかけてきました。福島原発の事故から4年半余り、事故収束のめどが立たない中で各地の原発が定期点検などで次々運転を停止し、とくに2年前からは全国のすべての原発が運転を停止しました。
実際には、事故直後を除けば、ほとんどすべての原発が停止した後も、夏も冬も電力不足は起きていません。節電などで電力需要が低下した一方、水力、火力などでの発電や太陽光、地熱などの再生可能エネルギーの導入が進んだためです。電力10社の販売電力量は東日本大震災以降、毎年減り続けており、原発を稼働させなければ電力が足りなくなるというのは全く根拠がありません。
7月から8月にかけ記録的な猛暑が続いたこの夏も、各社別の予備率で、「必要最低限」といわれる「3%」どころか、「きびしい」といわれる「5%」を割り込む日もゼロでした。政府は8月には関西電力や九州電力で予備率が3%になるかもしれないといって原発の再稼働を急ぎましたが、すべての電力会社が大幅な余裕です。8月から川内原発を再稼働させた九州電力も、再稼働前から自前の発電や中部電力、中国電力からの融通で電力を賄えていました。
安倍晋三政権や電力会社は原発が停止したままではいまにも電力不足が起きるようにいいたててきました。しかし夏も冬も余裕で乗り切れていることは、こうした主張が成り立たないことを証明しています。電力会社などは、火力発電所に頼っていれば石油などの輸入価格の上昇で電気料金を値上げしなければならないなどといいます。しかし、このところ国際的な原油価格は下落しており、それも大きな理由になりません。発電所の新設や太陽光発電の普及など電力会社が値上げすれば新しい会社に顧客を奪われるほどの状態です。
再稼働すれば事故の危険
もともと安全性の保証がなく、運転を再開すればそれだけで危険な使用済みの核燃料がたまり続け、地震や津波による事故の危険も高くなる原発は再稼働させるべきではありません。安倍政権は原子力規制委の審査に合格した原発は再稼働させるとして、川内原発1号機に続き、同2号機や四国電力伊方原発などの再稼働を急いでいます。それこそ電力会社のために国民を犠牲にする態度です。
電力供給に不安がないならなおさらのこと、原発は再稼働させず、停止したまま「ゼロ」にすることが、安心できる国民生活のために不可欠です。
(「しんぶん赤旗」2015年10月2日より転載)