多くの被災者が苦境に置かれたなか、東日本大震災から4年半を迎えました。しかし、安倍政権は、復興事業費を国の全額負担とした「集中復興期間」を本年度打ち切り、被災自治体に一部負担を求めようとするなど冷たい姿勢です。復興と生活再建が進まない被災地の現実は・・。
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「長かった。悲劇は続いています」と話すのは、福島県楢葉町から避難して、現在いわき市で暮らす金井直子さんです。
「店じまい」急ぐ国
楢葉町は9月5日、避難解除されて帰町が可能になりましたが、「戻った町民は1割にも満たない状況です。被災者に寄り添った中身のある復興策をしてほしい。住民の生活と命を守る政策が一番大切です」といいます。
東京電力に損害賠償を求めた福島原発事故避難者訴訟原告団(早川篤雄団長)の事務局長を務める金井さん。「第12回口頭弁論で2人の原告の証人尋問が終わりましたが、裁判長には原発事故で荒廃した故郷を直接見てほしい。現在進行形の被害の実態を現場で検証してほしい」と訴えます。
国と東電に原状回復と損害賠償を求めて約4000人の原告がたたかっている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の中島孝原告団長は「国が賠罰金の打ち切りを急いで行おうとしています。生活に直結しますから最大の不安となっています」と、国の強引な収束政策に抗議します。
国は居住制限地区の解除、2018年3月末で賠償金の打ち切り、営業損失を2年分を一括で支払い、その後は打ち切りと、「矢継ぎ早に店じまいしようとしている」と指摘する中島団長。「県民こぞって怒っている」といいます。
中島団長は「居住制限が解除になっても病院はない、コンビニもない、インフラがまったく不十分で帰る見通しはない。放射能の被害の実態を見ずに一律の帰還押しつけはあらゆる人たちに困難をもたらす」と警告します。
震災関連死が最多
内閣府のまとめによると、震災関連自殺者数は福島県72人、宮城県40人、岩手県33人(2015年7月末現在)と、福島県が最も多くなっています。震災関連死は、福島県1914人、宮城県910人、岩手県452人と、同じく同県が多くを占めています。
いわき市民約1500人が原告団となって国と東電に原状回復と損害賠償を求める「元の生活をかえせ、原発事故被害いわき訴訟」(伊東達也団長)の原告団副団長の佐藤三男さんは「原告で18歳未満の原告が266人。低線量地の健康被害にたいする不安がいかに強いかを示している」といいます。
「福島県民がどんな生活におかれているのかを知ってもらいたい。国と東電に謝罪させて廃炉につなげたい。それを全国に広げたい。川内原発の再稼働は人間としてやるべきことではない。福島の苦難の傷口に塩を塗る行為に等しい」と語っています。
(菅野尚夫)
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2015年9月11日より転載)