九州電力は8月21日、再稼働した川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)について、復水器に海水が混入した恐れがあるため、予定していた75%から95%への出力上昇を延期すると発表しました。点検に少なくとも1週間程度かかる見込みで、25日に予定していたフル稼働は遅れます。
九電は「3台ある復水器のうち、1台に微量の海水が混入していると推定されるが、除去できており運転継続に支障はない」と説明しています。
九電によると20日午後、2次冷却水を循環させる復水ポンプの出口で、水中の塩分濃度を監視する「電気伝導率」の数値が上昇。復水器は発電タービンを回した後に2次冷却水を冷やす装置で、復水器内の水を調べたところ、実際に塩分濃度が上昇していました。
復水器には、冷却用の海水を取り込む細管(チタン製)が1台当たり約2万6000本通っています。九電はこの中のいずれかに穴が開き、海水が復水器内に漏れたとみています。点検で漏えい箇所が見つかれば、その配管を封鎖するといいます。
同様のトラブルは全国で過去に50回ほど起きているといい、川内原発では初て。九電では玄海原発1号機(佐賀県玄海町)で1997年、99年の2回あったといいます。
九電はトラブルの深刻度によってレベル0〜4の5段階に分けており、今回は工程に影響するが運転を継続するという「レベル2」にあたるとしています。九電が原子力規制庁に報告したのは、「電気伝導率」の数値上昇の警報から19時間後の21日午前9時25分。規制庁は同日の会見で、「法令上の報告事項ではないので、(公表姿勢について)言うべきことではない」と述べました。
川内1号機は11日、新規制基準に基づき全国の原発で初めて再稼働。出力は16日に50%、19日に75%到達し、21日に95%に上昇させる予定でした。
停止し原因究明を・・館野淳・元中央大学教授(核燃料化学)の話
川内原発1号機は4年以上、運転を停止していました。長い間運転をしていなかった原発は、腐食が進むので、今後トラブルがあちらこちらで出てくるのではないか。さらに運転開始から31年経過しており、原因の究明が必要です。スタートから問題が出てきたわけで、少なくとも運転を停止して調べるべきです。また、2号機も長期間停止しているので、同様の影響がないか検討する必要があります。
2次冷却水
原子炉の中で熱せられた高温高圧の水(1次冷却水)から蒸気発生器で熱をもらって蒸気になる水のこと。川内原発と同型の加圧水型原発では、この仕組みが使われています。
(「しんぶん赤旗」2015年8月22日より転載)