「司法の場に引きずり出せた。一歩前進だ」。東京電力の旧経営陣らが強制起訴されることについて、福島県川俣町山木屋地区の出身で、現在は同町の仮設住宅で暮らす渡辺幹夫さん(65)はこう話しました。妻はま子さん=当時(58)=は避難生活によるうつ病が原因で自殺しています。
夫婦は山木屋地区の集落で生まれ育ち、結婚しました。3人の子を育て、故郷で一生を終えるはずでしたが、東電福島第1原発事故が全てを変えました。
事故後、川俣町から福島市のアパートに移り避難生活を送りました。しかし、慣れない生活にはま子さんは隣室の様子を気にし、食欲がなくなり、体重は減少。うつ状態になり、2011年7月に一時帰宅した自宅で焼身自殺しました。はま子さんは自殺前日、「アパートに戻りたくない」と話していました。
渡辺さんは東電を相手に訴訟を起こしました。一審福島地裁は昨年(2014年)8月、避難生活と自殺との因果関係を認めて賠償を命令し、判決はそのまま確定しました。今回の告訴団には参加していませんでした。
しかし、現在も11万人を超える人が福島のふるさとを離れ、避難生活を送っている現実を忘れることはできませんでした。「はま子と同じ苦しみを抱えている人もいる」と渡辺さん。「これだけ大きな事故を起こしたのだから、きちんと(東電の責任を)判断してほしい」と語りました。
(「しんぶん赤旗」2015年7月31日より転載)