【シドニー=ロイター】風力発電は「見た目がひどい」というオーストラリアのアボット首相の敵視発言が、業界関係者を震え上がらせ、北部に計画されている同国最大規模の風力・太陽光発電プロジェクトを危うくなりかねない状況に追い込んでいます。
石炭発電を推進
保守党のアボット氏はこれまでも風力発電批判を公言。「ひどい」「うるさい」などと述べて、石炭火力発電を推進してきました。こうした立場は、地球温暖化防止のためにエネルギー産業の見直しを進めている米国や中国と相いれなくなっています。
アボット氏は1カ月前、同国の「再生可能エネルギー目標」を20%引き下げるとともに、「クリーンエネルギー金融公社」(CEFC)に対し、風力発電への融資を停止するよう命令を出しました。同国では、風力が水力に次いで第2のクリーンエネルギーとなっています。
資金集めに懸念
この命令によって、北東部クイーンズランド州で計画中のケネディー風力発電所(出力120万キロワット)にCEFCの初期投資が行われなくなる可能性が浮上。その結果、民間からの資金集めが難しくなるかもしれないと同プロジェクトを進める会社は懸念しています。
オーストラリアは7月初め、中国のエネルギー大手、神華能源によるウオーターマーク炭鉱開発プロジェクト(ニューサウスウェールズ州)を認可。しかし、第一級の農地にあることから、農業省は反対しています。
オーストラリアは石炭の大産出国で、1人当たりの温暖化ガス排出量も先進国で最大です。
ディーキン大学のサマンサ・ヘップバーン教授は、アボット政権が石炭産業に事実上の補助金を与えていると批判。「必要なのはエネルギーミックスであり、風力発電はそのなかで欠くことができない。再生可能エネルギー部門には補助金が必要で、それなしで同部門は生き残れない」と指摘しています。
(「しんぶん赤旗」2015年7月24日より転載)