日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 政府の17年3月帰還方針 実態見ぬ一律解除 本質的におかしい・・福島・浪江町長馬場有さんに聞く

政府の17年3月帰還方針 実態見ぬ一律解除 本質的におかしい・・福島・浪江町長馬場有さんに聞く

浪江町の帰還困難区域にある放射線モニタリングポスト。毎時7・576マイクロシーベルトを表示している(平常時の一般人の被ばく限度は毎時0・23マイクロシーベルト)
浪江町の帰還困難区域にある放射線モニタリングポスト。毎時7・576マイクロシーベルトを表示している(平常時の一般人の被ばく限度は毎時0・23マイクロシーベルト)

 政府が帰還困難区域以外の区域(居住制限区域、避難指示解除準備区域)の避難指示を2017年3月で解除し、東京電力の賠償も早期に終了させることを決めたことについて、いまも全町避難が続く福島県浪江町の町長で、双葉郡町村会長も務める馬場有(たもつ)さんに聞きました。                          (柴田善太)

 ——17年3月での避難指示解除をどうみますか。

 避難指示解除は「最初に終期ありき」であってはならないんです。住民が帰還して生活が営める環境ができることが前提になります。

 13年に避難地域が帰還困難区域など3区域に再編された時、浪江町は政府と6項目の合意を交わしました。

 ▽避難指示解除は当該自治体と協議し一方的、一律的に決めない▽医療・介護と交通などのインフラが整備される▽放射線量の十分な軽減、とりわけ子どもの生活環境の安全確保▽避難指示解除後についても、暮らしと生業(なりわい)が戻るまで、生活再建策、賠償を続ける——などが主な内容です。

 自治体ごとで被害の様相、復旧の具合も違います。浪江町では国が直轄で行う除染が遅れていて、そのため復旧がなかなか進みません。国には町の現状をしっかり見てほしい。「戻りなさい」といわれても、インフラも回復しないのに戻れないですよ。「自立せよ」ということも言われましたが、現実的には齟齬(そご)があります。

 個々の自治体の実態を考慮せずに一律に避難指示の終期を示したことは、本質的におかしいと思います。

町民に不安が

 ——浪江町の復興状況はどうですか。

 復旧と復興はわけて考えることが必要です。まだ復旧のスタートラインに立ったところです。除染は仮置き場が確保されたことで加速し、居住制限区域と避難指示解除準備区域では約3割まで進みました。津波被害のガレキ処理が始まり、危険地帯の土地買い上げは73%まできました。

 加速したとはいえ、除染の到達度がまだ低いことがネック。もう一つのネックは福島第1原発事故が収束していないことです。汚染水問題もそうですが、溶け出した燃料の取り出しは、果たしてどうなるのか。町民はみんなそういうことを見ています。町が本当に住める場所になるのか不安なのです。

 ——賠償などをめぐり住民間に複雑な事態もありますね。

 議会質問で出たのですが、避難先の小学校の運動会のリレーで町の子どもが走ると「10万円(『精神的賠償』の月額)が走ってる」とヤジが飛んだというんですね。悲しいことです。

 私たちは原発事故で着の身着のままでバラバラに避難し、ふるさとも仕事も地域コミュニティーも全てを奪われました。私自身、4世代で暮らしていましたが、いまは息子と孫とは別々の生活です。ありふれた生活空間を奪われたことが悔しいです。

 自然災害とは違う原子力災害の深刻さを風化させてはいけない。町の震災関連死は363人に上っています。

再稼働認めぬ

 ——町の復興計画に「脱原発」を掲げていますが、この間の政府の再稼働に向けた動きを、どう見ますか。

 福島原発事故の原因究明もできていない、収束もできていないんですよ。IAEA(国際原子力機関)も、東電は巨大地震を想定していたが対策を取らなかったと批判しています。そういう総括もないなかで、原発再稼働、原発輸出などというのは言語道断です。受け入れられません。

 

浪江町の被害と現状

▽震災で震度6強の揺れ。 15メートルを超える津波で約6平方キロメートルが浸水、的600棟が流失

▽震災原発事故前の人口約2万1千人。震災での死者・不明者182人。震災関連死363人(2015年5月末時点)

▽災害廃棄物は推定28.9万トン。廃棄物仮置き場への搬入は5.1トン(2014年末時点)

▽除染完了(国の責任による直轄事業)

・宅地8%・農地11%・森林13%・道路17%(2014年末時点)

▽上水道の配水管の復旧は的40%

▽全村が避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域の3区域に分けられ、いずれの区域も宿泊は不可。前者2区域での一部事業所の再開は可能。被災前の町内事業者は約1000、2014年末で事業再開は15

▽2014年末で約3800人が仮設住宅、約6600人が借り上げ住宅(みなし仮設)で生活。復興公営住宅は計画2500戸、完成は約1%

▽帰還への住民の意識

・戻りたい 17.6%

・判断がつかない 24.6%

・戻らない 48.4%(2014年8月時点)

(震災・原発事故4年での町の発表等を基に作成)

(「しんぶん赤旗」2015年7月11日より転載)

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