東日本大庭災から3年、防潮堤と津波の防災について、津波工学が専門の東北大学名誉教授・首藤伸夫(しゅとう・のぶお)さんに聞きました。
防潮堤をどうするのかは、そこに住む住民が話し合って決めるべきです。
頼り切り危険
大きな防潮堤をつくれば、それだけ津波を防ぐことができますが、それを越える津波が来ない保証はありません。防潮堤に頼り切ってしまうのは危険です。
また、防潮堤は多くの場合地盤が良くない沿岸につくられます。岩手県久喜海岸では、築造後20年で背後の地盤が陥没しました。50年後には地形などが変化しているかもしれません。
構造物は劣化していきます。維持費も多大にかかります。自治体はそれを負担していけるのでしょうか。
たまにしかこない大津波への対策は難しいものです。継続して取り組めるのは、そこに住む住民だけです。必要なのは、住民が話し合い、決断することです。
国は、防潮堤の建設の期限を決めずに、住民の結論がでた時に予算を使えるようにするべきです。そうすれば自治体も佳民の議論を待つことができます。
津波の対策は、「高いところに住む」「高いところに逃げる」「低いところは水に浸かることを覚悟して建物を造る」ことです。
時間がたつと
チリ地震津波に襲われた1960年以降、防潮堤や堤防が各地に造られるようになりました。
東日本大震災の被災地でも、過去の三陸大津波で高台に移転したものの、時間がたち、さらに堤防ができてからは、低地に住む人が増えていった地域があります。
東日本大震災時には、昭和三陸津波(33年)を経験した世代と子どもの世代よりも、孫の世代に防潮堤への依頼心があり、逃げ遅れた事例がありました。
人は忘れやすいものです。今までの例をみると、8年もすれば忘れ始め、30年後には世代が変わり、経験が伝わらなくなっています。
それぞれの地域で津波の被害を次の世代に伝えていくことを絶やさないことが重要です。
聞き手・佐藤幸治