2030年の日本の電気の半分は、危険な原発と地球温暖化を加速する石炭火力発電から。安倍音三政権が描く電気の将来
図です。理由は安いから。“高い再生可能エネルギーの無理な導入は、経済に悪影響”という財界の言い分そのままです。4回連載で検証します。
(佐久間亮)
経済産業省の審議会で了承された「長期エネルギー需給見通し」案は、30年の電源構成比率を原発20〜24%、石炭発電26%、再エネ22〜24%としています。この見通し案をもとに、安倍首相は30年までの日本の温室効果ガス削減目標案を主要7カ国首脳会議で発表し、「国際的に遜色ない」と言い切りました。
東北大学の明日香壽川(あすか・じゅせん)教授は「国際社会の評価は全く逆。典型的な大本営発表です」と批判します。
原発推進の思惑
既存の原発を使用期限40年間で順次廃炉にすると、30年の原発比率は約15%になります。原発の使用期限延長や新増設を前提にしなければ、20〜22%には到達しません。
一方、需給見通し案で示された30年の太陽光の発電比率は7%(設備容量6400万キロワット)、風力発電は1・7%(同1000万キロワット)です。現在稼働中の太陽光の設備容量は2120万キロワットですが、固定価格買い取り制度の認定容量は7160万キロワットに達し、すでに需給見通しを超えています。風力も、既設分に環境影響評価中のものを加えると約800万キロワットになります。
需給見通し案は、これ以上の再エネや省工ネの導入は必要ないという抑制目標です。背景には、再エネ導入などでシェアや売り上げが落ちる大手電力会社や原発を推進したい国の思惑があります。
価格形成の中心
明日香教授は、多くの国では、経済成長やエネルギー安全保障のためにこそ、原発や化石燃料から再エネヘとエネルギーシステムを変革していると語ります。
実際に、電力自由化と再エネ普及が進んだドイツでは、卸売市場での電力価格がここ数年下降し続けています。それは、市場では、限界費用(発電量を1単位増やすときにかかる追加費用)が安い電気から供給されるからです。燃料費がほとんどかからないために発電コストが小さい太陽光や風力による電力は最優先で取引され、卸市場で価格形成の中心になります。この価格下降傾向は再エネが普及するほど強まります。
再エネの急速な普及が進む欧州では、火力や原発など既存の大型発電が再エネとの価格競争に敗れ、不採算化する現象が起きています。再エネ比率が25%を超えたドイツでは昨年11月、同国最大規模の電力会社エーオンが、再エネを中心とした企業形態に転換するため、原発と火力発電部門を分社化すると発表し、衝撃を与えました。
欧州連合(EU)の電力業界を調査した東京財団のリポートは、ドイツでは再エネの普及が進んだ2000年以降も国内総生産は右肩上がりになっていると指摘。同リポートは、日本では、ドイツは再エネの失敗例のように語られるが、「再エネ普及で経営が苦しくなっているのは再工ネ比率が低い電力会社のこと」だとしています(5月21日付)。
日本でも再エネ普及は、確実に火力や原発を不採算化させるため既存の大手電力会社が強く抵抗しています。
「最近、米国企業が従来の約3分の1の価格の蓄電池を開発しました。急速な技術革新や価格破壊など、まさに産業革命が起きているのが再エネの世界です。再エネによって大幅に雇用も増えます。日本で、ごく一部の人々の極めて短期的な利益のために既存のエネルギーシステムを変更しようとしないのは日本経済全体の発展にとって明らかにマイナスです」(明日香教授)
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2015年6月11日より転載)