技術革新や量産効果によって再生可能エネルギーの導入価格は年々低下しています。
ところが、経済産業省の発電コスト検証ワーキンググループの報告は、前回2011年の検証と比べ、陸上風力で最大約12円、地熱で同約8円も1キロワット時当たりの発電費用が上昇しています(14年ケース)。その結果、11年の試算の下限では石炭発電や原発とほぼ同額だった風力や地熱の発電費用が、今回の試算では明らかに割高になっています。(表↓)
最大の原因は、11年の検証では含まれていなかった再エネの政策経費(税金などで賄われている経費)が、試算に入れられたことです。大部分は、再エネの普及を促進するための固定価格買い取り制度にかかわる費用です。
時間を買う制度
立命館大学の大島堅一教授は、再エネの政策経費は時間を買う制度だと語ります。
「いずれ化石燃料は枯渇し、再エネに依拠せざるを得ない時代がきます。しかし、それを待っていては、地球温暖化は止められません。市場の判断だけでは再エネ導入が進まないときに、持続可能な社会をつくるために先行投資する。再エネの政策経費を費用に含めること自体おかしな話です」
大島教授はその上で、仮に再エネの政策経費を発電費用に含めるとしても、今回の試算には問題が多すぎると指摘します。
発電費用は、各電源にかかる費用を合計し、それを発電電力量で割って算出します。発電電力量が少ない段階で政策経費を費用に含めると、発電電力量の少ない電源ほど費用が過大に見積もられることになります。
そのために11年の検証では、年間発電電力量500億キロワット時以下の電源については、政策経費を費用から除外していました。
今回の試算は、発電電力量にかかわらず、全ての電源に政策経費を含めました。経産省は太陽光発電の発電電力量を約930億キロワット時としていますが、これは設置が認定された段階の発電所も含めた数字です。現時点での発電電力量は約250億キロワット時にすぎません。
陸上風力は、認定段階を含めて135億キロワット時、地熱は認定段階に加え現在計画中のものまで含めても104億キロワット時です。安倍政権は、再エネの導入を抑制しているため、30年時点でも陸上風力は161億キロワット時しか見込んでいません。
再エネの導入を抑制しながら政策経費を試算に含めたため、発電費用に占める政策経費の割合は陸上風力28%、地熱36%です。現在稼働率ゼロの原発は、現存43基が7〜8割稼働したと仮定した結果、高速増殖炉の研究開発費1200億円など3450億円と巨額の政策経費を見込みながら13%です。
ピーク時で計算
その上、固定価格買い取り制度の賦課金単価は、30年ごろをピークにその後急降下し、ほぼゼロに近くなります(↑グラフ)。今回の試算は、30年を基準にすることで、最も賦課金が高い時期の数字を再エネの費用としてつけ加えているのです。
「賦課金が高額になっているのは初期の制度設計に問題があったからで、政策の失敗です。一番高い時期の費用を持ってきて、あたかも再エネの固有の問題かのように描くのは、再エネを高く見せようとする意図があるとしか思えません」
(大島教授)
再エネ賦課金と固定価格買い取り制度
賦課金とは割り当てられた負担金のこと。再エネ普及のため電気を使うごとに一定額が電気料金に上乗せされます。固定価格買い取り制度は、電気事業者に対し国が定めた価格で再エネ発電の電気を買い取ることを義務づけたもの。賦課金が買い取り費用に充てられます。
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2015年6月13日より転載)