福島県双葉町、浪江町、楢葉町など沿岸部の住民473人が東京電力に総額225億8920万7122円の損害賠償を求めた福島原発避難者訴訟(早川篤雄原告団長)の第11回口頭弁論が6月10日、福島地裁いわき支部(杉浦正樹裁判長)でありました。小川貴永さん(44)、新野亥一さん(68)、渡部一美さん(79)の3人の原告本人尋問が行われました。本人尋問は初めて。
3人はいずれも双葉町で暮らしてきました。
小川さんは、養蜂業を生業(なりわい)とし、高島屋など大手デパートにも納入していました。神社の氏子総代や農業委員を務めるなど地域コミュニティーの中心になっていました。
「農業の再開は難しい。自分が生きているうちには難しくても故郷を取り戻すことを(目標に)持っていないと次につながらない」と証言しました。埼玉県など転々と避難生活を強いられた父親は認知症を発症し、子どもだちと別々の仮設住宅で暮らさなければならないなど数多くの苦難を強いられている実態について陳述。「可能ならば故郷で(農業を)やりたい」と結びました。
自動車整備工場を営んできた新野さんは、「実際の姿を見てほしい」思いからつなぎの作業服で法廷に立ち、「『まだ仕事をしていこないのか』と言われると悔しさでいっぱいになる」と仕事を奪われた怒りを語りました。
渡部さんは5代目の農家。稲作を400アール、40アールの野菜ハウス、牛を14頭飼っていました。「せがれに継がせる気だった。故郷を追われ、帰りたくても帰れない。何と表現して良いのか言葉で言えない。情けない」と切々と証言しました。
(「しんぶん赤旗」2015年6月11日より転載)