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“福島に生きる”世の中のウソに気づく・・フリーのピアノ講師 阿部一枝さん

 「いつもベートーベンがそばにいてくれました」と話す阿部一枝さん
「いつもベートーベンがそばにいてくれました」と話す阿部一枝さん

 「世の中のウソに気づきました」というのは、福島県相馬市でフリーのピアノ講師として活躍する阿部一枝さんです。東京電力福島第1原発事故後、「社会の仕組みを見る目が変わりました」と話します。

■人生の大転換に

 「危険だとは思ってもいませんでした。安心、安全とばかりに思っていた原発が爆発。放射能に脅かされました。真実を見抜けなかった。人生の大転換です」と「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告に加わりました。

 同訴訟の原告団長を務める中島孝さんが営む中島ストアーに買い物に行ったときに誘われました。「訴状を読ませてもらいました。自然を破壊して、生活をメチャクチャにする原発事故。廃炉にするほかにないと悟りました」

 「3・11」の日。突然の揺れで、レッスン中の小学3年生をピアノの下に潜り込ませました。余震が続き、庭に避難。

 「家は踊りを踊っているように揺れました。原発が爆発したあとは地獄でした。物資が入ってきません。2、3週間は冷蔵庫には何もない状態でした。仮設住宅には支援物資は届けられますが、自宅に残った被災者には救援物資は届けられなかったんです」

 阿部さんがピアノを始めたのは小学2年生のときでした。ベートーベンの「エリーゼのために」を聴いてメロディーの美しさに感動しました。「こんな美しい曲が弾けたならうれしい」と習い始めました。小学5年生ごろになると「エリーゼのために」を弾きこなせるようになり、テレビに出演することもありました。

 「子どもが好き」だったことから短大の保育科に進みました。「保育科のピアノの先生が『レッスンに来い。ピアノの先生にならないか』と誘ってくれました」

 結婚後、楽器メーカーのピアノ講師やクラブなどで生演奏をしてきました。10年前に独立しフリーに。自宅で子どもたちにピアノを教えるように。

■音楽に励まされ

 阿部さんが最近好んで弾く曲は、ベートーベンの「テンペスト」(ピアノソナタ第17番ニ短調)、「大ソナタ悲愴」(ピアノソナタ第8番ハ短調)などです。「(ベートーベンの曲は)自分を鼓舞してくれ、ずっと私のそばにいてくれました」

 最近のピアノ教室に来る子どもたちの変化が気になっています。

 「原発事故後に外遊びができなくなり、『屋内でレッスンするピアノなら安心』と通わせる親が多くなりました。ピアニストになるとか、音楽家を志すとか目的を持った子どもさんが少ないです」

 生業訴訟の口頭弁論のある日は毎回、傍聴や裁判所へのアピール活動、報告集会に参加する阿部さんの姿が見られます。

 「原状回復と再稼働反対の人たちと一緒に歩みます。不安と苦しみをもたらす原発を廃炉にするまでたたかっていきます」

(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2015年6月7日より転載)

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